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高齢者介護施設における看護職員の役割について

2016-06-03

施設での看取りも、もはや珍しくなくなった今日。看護職員に求められるスキルは多様化しています。病院とはまた異なる働きが期待される、高齢者介護施設の看護職員。しかしそれをきちんと明示してくれている職場は少ないように感じます。看護師さん自身もどうして良いのか分からず、迷う事も多々あるのではないでしょうか。今回は介護施設で働く看護師さんにスポットをあて、その現状と今後の課題、期待される役割について考えていきます。

現状と課題

高齢者介護施設に勤務する看護師さんは、タイプが極端に分かれる傾向にあります。施設の役割をしっかりと把握し、求められる役割をこなしている看護師さん。もう一つは、どうしても病院色が抜けず、施設の機能にマッチングできない看護師さん(もしくは、リタイアを決め込んで、全くやる気のない看護師さん)です。

後者のタイプは、運営サイドからしてもチームとして働く他職種としても、非常にやりづらいものです。指摘しようにも、なかなか上手くいきません。そして施設の看護職は人気があるとは言えず、この人が辞めてしまったら施設は減算…。指導に二の足を踏むのは、当然の構図かもしれません。

しかし、医療依存度の高い利用者も増え、施設での看取りも増えてきた現状。そのため、看護師さんの担うべき役割は、とても大きなものとなっています。看護師如何で、その施設の良し悪しが決まるといっても過言ではないでしょう。きちんとした役割を明示することで、迷える看護師さんを救うことにもなるのです。

期待される役割

<介護職員から期待されるもの>

利用者の日々の様子を、一番近くで見ているのが介護職員です。その介護職員は利用者の小さな変化を見て、気になったり、大丈夫かなと不安に思ったりします。そこで看護師さんに報告しますが、その内容は看護師さんから見ると取るに足らないことだったり、言われてもどうしようもないことだったりするでしょう。しかし、介護職員にその区別はつきません(区別をつける立場にありません)。ですから何もする必要がない場合でも、次のように一言添えてあげて欲しいのです。

「これは、様子見て大丈夫。往診の時も報告しているから」

「これはこのままにしておいた方がいいね。下手にいじるとかえって刺激になってしまうし」

そして、「報告ありがとう、また気になったことがあったら教えて」と付け加えます。そうすることで、「余計なことを言ってしまった」という気持ちが消えます。本当に必要な報告をしてもらう為に、些細なことでも話せる関係作りは重要です。

<運営サイドから期待されるもの>

運営サイドは看護師さんに医療的な役割のほか、他職員のお手本となる行動をとって欲しいと思っています。免許取得のためにきちんと学習し、社会人としての一般常識を兼ね備えている看護師さんは、職員の良いお手本なのです。

施設には年齢や学歴、経験もバラバラで、言葉使いもままならない人も働いています。不足しがちな一般常識や接遇など、一緒に仕事をする近い位置で見せてあげて欲しいのです。そうした姿を通して、特に介護職員との信頼関係が出来ると、看取りケアの際に大きな効果をもたらします。信頼している看護師さんからの言葉で、看取りを不安に思う気持ちが和らぐのです。

<医師から期待されるもの>

往診で定期的にご利用者を診察する医師は、日々の変化をつぶさに見ているわけではありません。そのため、看護師さんからの情報が頼りです。だからこそ正しい判断を下せるよう、必要な情報を分かるように提供して欲しいと思います。それはバイタルサインの変化など具体的な数値だけでなく、本人やご家族がどのようなスタンスで疾病に向き合っているか、看取りに対する心構えがどの程度かといったことも含んでいます。

時には、医師の方から「どうしてほしい?」と聞かれることもあるでしょう。そんな時、利用者にとって一番必要なことを、施設の相談員やケアマネと連携しながら医師へ伝えることが出来ればいいですね。

<ご利用者・家族から期待されるもの>

利用者やその家族によっては、他職種から受けた説明より、看護師さんから受ける説明をより信用する方もいらっしゃいます。医師からの話や普段のご様子など、丁寧に説明しましょう。そして希望がある場合、差し支えない範囲での医療行為をお見せすることも有効です。「こんな風にいつもしてもらっているんだ」と様子が分かり、安心に繋がります。面会中だからと遠慮していると、「何もしてくれない」「誰も来ない」と不安に感じることも。積極的に関わりを持ってください。

とはいえ、あくまでも看護業務がメインの看護師さんです。生活相談員やケアマネとの相談なしにご家族と話し続けたり、医師に的外れな要望を伝えたり。あるいは、介護職員を教育しているつもりでダメ出しを連発することはNGです。

看護師さんが迷わず働けるように、運営サイドがサポートを!

看護師さんとの連携が上手くいかないと感じるのなら、看護師さんのせいにせず、まずは役割を明示しましょう。きちんとしたオリエンテーションなしに、あいまいな説明のみで現場に出していませんでしたか? 期待される役割を把握できれば、看護師さんも迷うことなく、お仕事を続けられるのです。

また、高齢者介護施設はあくまで“生活の場”。治療する場ではありません。病院レベルの処置用具や物品を当然のものと要求して事務所とトラブルになったり、「介護は看護のすることではない」といった考えで行動したりといった問題はよく起きますが、これも説明不足・認識の違いからくるもの。運営サイドは、そこをしっかりサポートしてあげることが必要なのです。まずは「施設とは、他職種協働でケアサービスを提供する専門家集団だ」という共通認識を持ってもらいましょう。

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