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高齢者施設での事故〜事故の予防とやってはいけないこと

2016-10-06

高齢者施設での事故には、予防できるものが多くあります。しかし時として予測不能な行動をとる高齢者の事故を、全て予見できないことも事実でしょう。予防できる事故をどう予防するか。そして、起きてしまった事故に際しやってはいけないことについて考えていきます。

高齢者施設における事故の予防

<起きた事故から分析する>

高齢者施設において、予防できる事故は過去の事例から学べます。恐らくどこの施設でも、事故防止委員会やヒヤリハット委員会などの活動をされていることでしょう。しかし、それらがきちんと機能しているかどうかが問題です。事故が減らない施設におかれては、この既存の委員会の活動について、見直されることをお勧めします。

さまざまな分析法がありますが、「そこまで本格的には……」という方は「環境」「行動(習慣)」「時間」「薬」の4つを最低限チェックしてみてください。転倒の原因を探ることは、今後の事故防止に多いに役立ちます。そして事故の原因は、多角的に探っていくことが重要です。単純に“物につまずいて転んだ”という事故でも、その背景に隠れている問題が見えてくることがあるでしょう。環境だけの問題なのか、その方の行動パターンはどうか、その時間帯のスタッフ配置数に問題はないか、薬の副作用が絡んでいないか。予防できる、つまり施設で改善できるポイントが見えてくるでしょう。

<筋力低下防止のための運動を取り入れる>

成果が見えづらく、ご利用者自身のモチベーションも保ちづらい高齢者施設での運動は、継続が難しいこともしばしば。レクリエーション的に運動を取り入れている施設も多いでしょう。ご利用者が飽きないように、楽しいレクを工夫されています。

また、個別リハの算定をされていない施設では、やって欲しいという希望はあるものの、その時間をとることは難しいのが現実です。その場合は、ベッドから車椅子の移乗といった生活動作に運動を取り入れたり、オムツ交換の場面で他動的な運動をプラスしたりというちょっとした時間を毎日作ることで、筋力低下の防止に努めることができます。

<新入職員への周知>

高齢者施設において事故が起こりやすいのが、担当者が変わったときや新任職員が入ったときです。普通なら「ここに置くよりこっちの方が便利だろう」と思って何気なく物を動かしたとき、それによって事故が起こってしまう……。

今までいる人なら、なぜそれがそこに置いてあるか、または置いてはいけないかなど経緯が分かっているからやっていることを、新しく来た職員は分かりません。それで事故が起こってしまうのです。それを防止するのがOJTであったり、チューター制度であったりするわけですが、そこまで細かく教えられる職員も少ないようです。業務中心に教えてしまいがちですが、特に事故防止の観点でのこうした指導は初期に行う必要があります。「なぜここに置いてあるのか」「なぜそうしているのか」といった理由が分かれば、担当者が変わったことによる事故は防止できるのです。

やってはいけないこと

<家族へのあいまいな説明>

事故の苦情としては、二転三転する説明や具体的な説明が出来ず謝罪を繰り返すだけといったことで、ご家族が不信感を持たれるケースが多いようです。事故の経緯や施設としての分析結果、今後どういった対策を打つのか、怪我をしてしまった際の補償等についてきちんとお話しましょう。入院を伴うお怪我をされた場合は、お見舞いに伺うことはもちろん、事故の分析や調査の経過だけでも定期的に報告を入れることをお勧めします。

また、ご家族へきちんとした対応をするために窓口を統一したのは良いものの、直接声を掛けられたスタッフが口をおさえて逃げて行ってしまったことで、さらなる苦情となったという話も聞きます。これでは、施設として悪いことをしていなくても「何か隠しているのでは」と疑われて当然です。窓口を統一する際は、事故に関することで声を掛けられた場合どう答えたらよいかといったことまで周知させる必要があるでしょう。

<介護スタッフの責任追及>

フロアを担当していた際の事故や、直接介護していた際の事故であっても、その介護スタッフ個人の資質やスキルを問題として、事故の責任を追及することは避けましょう。事故の原因を、介護スタッフの資質やスキルに求めてはいけません。介護スタッフのレベルを問題にしてしまえば、誰も事故報告やヒヤリハット報告を挙げなくなります。自分の技術不足を指摘されることを恐れて事故を隠すようになれば、施設内での事故は増える一方です。

そのため、事故を個人の責任とせず、組織の問題として捉える風潮を根付かせることが大切です。職員の資質に関しては人事考課、スキルに関してはスタッフ教育という、事故とは別の視点で捉えていきましょう。

事故はその取り組みによって、同様の事故を防止する大切な礎となります。一つ一つの事故に真摯に向き合い、事故原因を探っていけば、同様の事故は必ず防げるはず。同じ事故で痛い思いをされる方が出ないよう、取り組んでください。

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