病気の特徴を知り、傾聴につとめる 精神疾患を患う利用者の支援で重要なこと―1

2016-05-18

このところ、精神疾患を患い苦しんでいる利用者を支援するケースが増えている。対人援助職は、精神障がいで困っている人をどう援助したらよいのか、今後もっと学ばなければならないケースも出てくるだろう。この連載では、精神保健福祉士であり、ケアマネジャーでもある筆者が、実際に現場で経験したことをもとに、支援者として必要な点をていねいに解説していく。

精神疾患に関する支援のニーズは増えている

現在、国内で精神疾患を患い苦しんでいる方たちがどのぐらいいるかご存知でしょうか。

2015年度の内閣府『精神障がい者白書』によると、精神障がいで困っている方は全国で約320万人おられるといいます。

また近年、複雑な人間関係と社会情勢の中で精神疾患は年々、増加しています。そして筆者が医療、介護の現場に約10年間勤務していて、痛感していることは、これだけ社会的にも問題がある精神疾患に対して、理解がなかなか得られないことです。

最近はマンガなどで、精神疾患をわかりやすく解説してくれる書物が増えてきていますが、実際には精神科、心療内科に通院することに対して偏見や抵抗があったり、精神疾患の病識がわからず、どうしていいかわからないことがあります。

特に医療、福祉の現場では、より精神疾患の方を支援するケースが増加しており、対応に困るケースが増加しています。実際に筆者も支援する上で困り、何度も壁にぶつかっている状態で、日々、どう支援を行っていくか、考えさせられることばかりです。

そこで、支援を行う上でいつも心がけている基本的な点をいくつか挙げさせていただければと思います。

支援を開始する際には、ます病気の特徴を知る

通常、支援を開始する際には、利用者の既往を必ず確認し、特にそれについて注意をして行いますが、それと同様に精神疾患においても、どのような性質の精神疾患を患っているのかを知ることが重要です。

例えば統合失調症を患っている方なら幻覚、幻聴、被害妄想等が出現していることがあります。そのため、目に見えない物が本人には見えたり、聞こえたりします。

「壁に多くの虫が這って歩いている」「自分の悪口を言われているのが聞こえる」等。

また被害妄想が出現している場合は、「自分は追 われていて殺されそうになっている」「自分の部屋に他国の人間が攻め込んでくる」等。

実際に、利用者が目を血走らせながら必死に上記の主訴を訴えかけてきたこともありました。しかし部屋を見ると壁には多くの虫どころか虫すら這っていないし、誰かに追われている形跡もなければ、他国の方が攻め込んでくる気配もありません。

ですが、本人の中では、これらの出来事が起きている世界で生活しており、とても深刻な問題なのです。

だからこそ必死に訴えるわけです。そのため病気の特徴 を知っていれば「恐らくそういったことはないだろうが、病気が言わせていることだから」と支援者側は察することができ、焦る必要はありません。冷静に本人の語る世界に合わせ「辛い思いをしているのですね」「それはとても苦しいことですね」等、寄り添う言葉をかける事ができ、対応できます。

ですが、病気の特徴を知らずに、いきなり上記の発言を受けたらどうでしょうか。

支援者は驚いてしまい、ただただ戸惑うばかりになるのではないでしょうか。

そして、もし本人の話を否定するようなことを言ってしまったらどうでしょうか。本人にしてみれば、自分の悩みをせっかく打ち明けたのに否定されたと思い、心を閉ざす可能性があります。

初回訪問時に心を閉ざされるということは、その後の支援を行えなくなる可能性もあり、致命的です。そのために病気の特徴を事前に知って おくことが重要です。

相手のペースに合わせた傾聴が最も重要になってくる

『傾聴』この言葉は医療、介護の仕事に携わる方たちにとっては頻繁に耳にする言葉であり、とても重要だと思います。特に精神疾患の方たちにとって『傾聴』は重要です。

上記の統合失調症の方の訴えを例に挙げると、「壁に虫が〜」「自分は追われて〜」と訴えてきたとします。

本人は実際に起きていることと思っており、真剣に困り、悩んでいます。本人の悩んでいる事を相手のペースに合わせて傾聴し、相手の気持ちを自分のことのように共感することが大切だと思います。

ここで避けた方がよいのは相手の話を否定すること、自身の考えを押しつけること、一般的な常識論の話をすること、相手が話しているのに言葉を遮ることです。時折、沈黙する場面もあるでしょうが、本人が次に話そうとしている言葉を考えている場合や、言葉がまとまらず混乱している場合もあり、沈黙することにも意味があるときがあります。そのため、沈黙しても少し待つことも大切です。

こうやって話を聞くことにより、支援を行う上での重要な問題が見えてきたり、本人の訴えの言葉の裏に隠されていることがわかったり、とても大事な点も見えてくる場合があります。そして、これは信頼関係を構築する上でも、とても重要なのです。ただ、その際に時間は限られています。相手の話を聞き続けることはできないので、もし話が予想以上に長くなってしまったり、同じ話の繰り返されるときなどは「次の訪問がありますので、次回、また話を聞かせてください」等、相手の気分を害しないように、しっかり伝える工夫も重要です。

対人援助職一人ひとりが、もっと精神疾患についての知識を得る必要がある

今後、精神疾患に関する支援のニーズはますます増加し、社会全般において、より必要とされてくるでしょう。正直、支援としては、難しい分野であるとは思いますが、支援者側にとって、支援をより円滑に行うためには、医療、各事業所、社会資源との連携が重要になってきます。

そのために、まずは支援者一人ひとりが精神疾患についての大まかな病状の知識を得ることや、どのように支援を行っていけばよいかといった、対人援助のスキルと質を向上させていく必要性があります。

それは、今後の社会において、ますます対人援助職に求められてくることであろうと考えています。

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