自殺願望を訴える人にどう声をかけるか? 精神疾患を患う利用者の支援で重要なこと―7

2017-05-11

対人援助の仕事をしていると、支援相手から「死にたい」と言われることが意外と多いという。しっかり向き合おうと思ってもどうすればよいのか術がなく、どう対応してよいかもわからず、悩んだ経験も持つ人もいるだろう。ではどうすればよいのか? 絶対に行ってはいけない振る舞いにも触れながら、対応のヒントについて解説してみたい。

過去1年で自殺未遂者は53万人 自殺願望のある利用者への支援のあり方を考える必要が……

近年の日本では、先行き不透明な経済状況、複雑な人間関係、学校・職場内でのイジメ問題、困難な就活、業務の簡素化による仕事量の増加にパワハラ、家庭内でのトラブル、貧困問題、ガンや難病等の病気との対峙、子育て問題、介護疲労の増加、震災での被災……等のさまざまな要因によりストレスが増加、うつ病等の精神疾患を患う人の自殺率は増加傾向にあった。

今年に限っては横ばいと発表されたものの、日本財団の調査では、過去1年で自殺未遂者が53万人にも上るとわかり、4人に1人は自殺を意識したことがあるというデータが公表された。自殺予備軍が多く存在するということは社会的にも大きな問題である。

心の問題を抱えている方がこれだけ多くいるという事実を顧みると、人と関わり、人を支援していく対人援助職は、自殺願望を訴える利用者に対して、どのように支援を行っていくかを、きちんと考えなければならない。

自殺願望を訴える利用者に対して、どのような姿勢で支援を行うことが望ましいのか?

「死にたい」そう言われたときに、あなたならどうする?

「死にたい」そう言われたとき、あなたならどう返答するだろうか。

恐らく言葉に詰まるのではないか。対人援助を行う際に、このような場面に直面し、困ったり怖くなってしまったことがある方も多いのではないだろうか?

かく言う私もこう言われたことがあり、言葉に詰まった経験が幾度かある。冗談ならいいが、心底、思いつめて「死にたい」と言われると、まるでナイフの剣先や、銃口を突きつけられたかのような恐怖を感じ、声が出なくなってしまう。

とにかく何かを言わないと、その場の雰囲気がおかしくなるし、何も言わないことで信頼関係が崩れてしまうかもしれない。かと言って下手に何かを言ってしまうと、自分が帰ったあとに、その対応がきっかけでその人は、自殺をはかってしまうかもしれない。そうなると大変なことになるし、軽はずみな言葉はかけられない。ではどうすればよいのか……時間は無駄に経つばかり。わずか数十秒という沈黙がとても長く感じて恐怖と焦りが入り乱れる。必死に考えてなんとかあたり障りのないような言葉をかけ、その場をやり過ごした経験がある。

先日、参加させていただいた『ゲートキーパー養成講座 中級編』では、対象者、支援者、観察者に分かれて、実際に自殺願望を抱く利用者をどのように支援を行っていくか、ロールプレーが行われた。同じグループになった方のなかには「死にたいと言っている人にどのように声をかけてよいかわからず、言葉につまってしまった」と困惑したり、隣のグループでは、支援者役の方が感極まり泣き出してしまう場面もあった。ロールプレーだけでもここまで苦労をするわけで、改めて難しい支援のケースであることが痛感させられた。

では実際に、どのような対応が望ましいのかは、次の項で解説させていただきたい。

「自殺したい」と訴える人に対する基本的な対応とは?

まずは基本的な関わり方であるが、

この3つである。

先日、日総研出版『達人ケアマネ 2・3月号』に、「うつ病のある利用者の事例から学ぶ支援・連携ポイント」と題した記事を掲載させていただいた。その際に、自殺願望を訴える利用者にどう接するかを、ごく基本的な部分だけ記載したが、今回は、自身が支援していくうえで心がけていることを、さらにもう少し掘り下げて説明したい。

打ち明けてくれたことに対しねぎらいの言葉をかける

「自殺したい」と他人に訴えることは、なかなかできることではない。私自身、何回か死にたいと思ったことはあるが、やはり口に出すことはできなかった。恥ずかしいという気持ちがそこにはあるからだ。言ってもわかってくれないだろうと考えてしまうものだ。

誰それかまわず言えない話でもある。特に男性の場合は難しく、そのため、飲酒に走ってしまうことも多いという。飲酒すると判断力が乏しくなるため、自殺のリスクはさらに高まる。だからこそ、訴えてくれたことに対し、ねぎらうことが大事だという。

「ねぎらいの言葉をかける」ことは共感につながるからだ。

確かに、訴えた相手が、しっかり受け止めてくれれば、どんなに救われることだろうか。

よかれと思って言った言葉が仇になることも……まずは聞き役に徹する

相手のことを受け止めるためには、まずは、焦らず余裕を持って話を聴くことが大事だといわれる。ここでは「聞き役」という言葉がポイントになってくる。

しかし「聞き役」のつもりでも、よかれと思って言ってしまう言葉のなかに、相手を傷つけるケースもあるので注意したい。以下にその悪い例を、挙げてみる。

「激励する」「一般的な価値観や自身の価値観を押しつける」「自殺という行為に対して怒る。または批判する」「話題をそらす」「質問を連発する」等がその例である。

よく考えていただきたいのは、これらは「聞き役」の人が言うべき言葉か? ということだ。

「頑張ればなんとかなる!」「根性がないからダメなんだ!」「俺ならこれくらいできる! だからそれくらい甘えるな!」等、ついつい出てしまいがちだ。しかし、実はこれらは、自殺を考えている人だけでなく、精神疾患になって苦しんでいる方に対しても、よくない影響がある。こういった方たちは生真面目な方が多く、必死に頑張ったものの報われず、ズタボロになっている。だから自殺を考えたり、病気になっているわけで、これ以上、何を頑張ればいいのか? まさしくコップに目一杯、水が入っている状態である。だからそこにさらに水を入れようものなら、こぼれてしまうのである。

また「根性がないから〜」といった根性論についても、精神的に追い詰められたり、病状のせいでそうなっているわけであって解決できることではない。「俺なら〜」という発言も、立場や状況が全然違うわけだから、押しつけは逆に反発を招き、言われた側にしてみれば、心を閉ざすしかないだろう。

だからこそ、「聞き役」が大事なのである。「聞き役」=「傾聴」ともいえる。

そう考えていただければ、よりわかりやすいのではないか。

支援者が陥りやすい陰性対応の「逆転移」とは?

また、訴えた相手が、どんなに辛いことを抱えていたか、我慢してきたか、耐えてきたか、それらに耳を傾けることも重要である。「共感」が、対人援助においていかに大切なことかは明らかだが、誤った共感のケースもあるので、注意したい。

心理学用語に「転移」「逆転移」という言葉がある。これはフロイトが発見し提唱した概念である。「転移」は、過去に親や重要な人物に対し抱いていた感情や行動などを、今現在の対人関係のなかで、別の人物に置き換えることで、患者から治療者側に向けられる感情・態度をさす。『逆転移』は、治療者の抱く感情・態度である(精神保健福祉用語辞典参照)。

ここでは、支援者側が自殺の訴えを聴いた際に抱いてしまう、陰性対応(否定的な感情)の逆転移を挙げてみたい。

たしかに支援者は、上記のような陰性感情を抱きやすい。

私自身も、今までの連載のなかで事例を挙げている利用者や、他の利用者から「死にたい」と言われてしまうと、情けないことに陰性感情を抱いてしまっていた。どうしてその人が「死にたい」と思ったのか、深く聞くことができないでいた。「死にたい」と打ち明けてくれた人に対してねぎらいの言葉をかけたり、どれだけ辛い思いをしているかに対して共感できず、焦ったり動揺したりして話を聞き流したり、話題を逸らしていた。

対人援助のスキルを向上させていくことが今後の課題

自殺願望を抱く利用者の支援は難しい。政府や民間団体が陰ながら努力してくれていることもあり、自殺者は減少傾向になっており、冒頭で挙げたようにデータ上でも減少している。だが、現在の社会的背景を考慮すると、今後、精神疾患は増加し、自殺願望を抱く利用者も増加するだろう。私たち対人援助職は、必然的に、そういった願望を抱く利用者の支援を行うことが多くなると考えられる。

そのため、支援者である我々も知識をつけ、現場で支援を重ね、対人援助のスキルを向上させていかなければならない。

そこで私が痛感するのは、「傾聴すること」と「共感すること」の重要性だ。

「傾聴」と「共感」……幾度となく記載している言葉であるが、これがきちんとできていれば、自殺願望を訴える利用者と対峙でき、どうしていいかわからなくなった際にも、逃げ出したり怯えたりせずにすむだろう。辛い気持ちや悲しい気持ちを「傾聴」し「共感」することで、活路を見出すことができるのではないか。

支援者側も1人で抱えこまず、支援をどのように行っていくのか、チームで検討していくことが重要ではないか。支援者自身も、会社、家族等で自身の役割をそれぞれに担っており、さまざまな出来事や思いを抱えていて、ストレスを強く抱える傾向がある。バーンアウトしてしまわないように、日ごろからストレスケアをどのように行っていくのか、考えておくことも、とても重要である。

<参考文献>

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