高齢者ファーストで、行政はもっと制度の周知の努力と支援を

2017-02-28

居宅介護支援事業所のケアマネジャーの仕事をしていると、多くの相談を受けます。介護のことはもちろん、医療や障がいの分野、そして生活に付随するさまざまな制度に関する質問など。特に多職種連携と社会資源の活用が重要である居宅介護支援では、それらの理解と実践力がケアマネジャーには求められているものの、一筋縄でいかないことも少なくありません。高齢者世帯が増加していく中でますます複雑になっていく制度や、年度の途中でも行われる改正。近年、支援を求められたり相談を多く受けたりしたケースについて触れながら、今後の課題について考えていきましょう。

近所の人から、もっとショートステイに安く泊まれると聞いたのだけど

ショートステイを利用されている利用者の家族さんから、よく「もっと安いショートステイがあると聞いた」「同じ部屋に泊まっている、同じ介護度の人より、どうしてうちの方が高額な利用料を請求されるのか」という問い合わせを受けます。つまりショートステイで算定している加算や負担限度額のことなのですが、分かりにくいこともあり、事前説明で納得してもらっているはずでも問い合わせが来ることがあります。

ショートステイを何度か利用した、または施設入所待機のために一定期間の利用となっている場合。同じ立場にある家族同士の情報交換や近所・親戚から伝え聞いた話で、「自分は損しているのではないか」と感じてしまうようです。

居宅介護支援は、単に空いているショートステイの利用を支援するのではありません。吸痰などの行為が必要だったり、医療度の高いケースの方に対しては医療連携加算を算定しているショートステイ、看護師が多く確保されているショートステイの利用に至ったりすることがあります。もちろん利用者本人、そして家族のニーズに沿う形で。しかし、後に他人からさまざまな情報を得ると、新たな疑問や焦りを感じてしまうのでしょう。

大抵の場合は再度の説明と試算で納得してもらえるものの、ときに繰り返しの説明になる場合もあります。どうしても納得してもられない場合は、「市役所→居宅→ショートステイ」の順で何度も苦情内容に近い電話が繰り返され、対応に半日かかったこともあります。

「困ったな」と感じつつ、相手の必死さも感じます。冷静に聞けば納得できることも、他の人の話の一部を聞いて自分と比べてしまい、穏やかな気持ちになれないという心情は気の毒でもあるでしょう。特に最初から市役所に電話してしまうと、「担当のケアマネジャーに聞いて尋ねてみて」という対応をされることも。すると、じれったい気持ちを抱えることになるかもしれません。

負担限度額認定の申請とケアマネジャーの立場から動かざるを得ないこと

宿泊サービスの食費や居住費において、世帯の収入に応じて段階的に減額される制度である「負担限度額認定」。2年前から申請時の添付に必要な書類の一つとして、利用者本人と配偶者の通帳のコピーを添付することになりました。当時、保険者からケアマネジャーのいる事業所に手続きを支援してほしいという通知が届いたところも多いでしょう。私の勤務している地域では、市の広報に載せたり、市役所のホームページに載せたりという形で情報提供されました。

しかし実際はその方法だけで理解できる人は少なく、ケアマネジャーが個別説明したときに承知していた方はほぼいませんでした。結局ショートステイ等を利用している利用者にとっては、負担限度額認定証の有効期限までに必要書類を添えて提出しなければならず、当居宅ではケアマネジャーが周知と手続きの全てを行ったケースが半数以上だったのです。

後に国がケアマネジャー協会へ正式にその協力を要請したこともあり、利用者にとって不利益が生じないよう、担当のケアマネジャーは皆協力を余儀なくされたという感覚でした。

通帳のコピーに関しては、高齢者世帯でコピー取得の手段がないということも。高齢でなくとも家族がどうして良いのか分からないという場合、事業所のコピー機を利用してもらうこともあったのです。田舎にはコンビニがなく、居宅に「コピーがね……」という相談を受けると、「(居宅事業所で)コピーさせてほしい」というニュアンスでもありました。

もっと別の方法があったのかもしれません。もちろん、動ける家族がいるのであればと割り切った対応もできたでしょう。しかし初めての対応と日々の忙しさもあり、「事業所に家族が来てくれるならコピー機くらいは」と考えていました。

こうして添付書類に通帳コピーを含むようになった初年度は、説明のための電話や訪問、オリジナルで作成した資料、遠方の家族とやり取りに必要な郵送、遠くまで車で書類を受け取りに行くなど、多くの時間と費用がかかってしまったのです。

各種制度の複雑さ、理解しにくいことからくる不信感、苦情と相談

負担限度額認定では、非該当になる一定の収入がある世帯でも、何年にもわたって介護サービスの利用が必要となると、毎月の支払いが家計を圧迫してしまいます。そのため、「障がいの赤い手帳を持っているのに介護では割引にならないのか」という相談を受けることも少なくありません。説明できる家族が同居していれば良いのですが、高齢夫婦の2人暮らしでは制度の別は難しいでしょう。また、健康保険証を含む証の多さから理解も難しいのです。

どの制度でも、更新や変更では保険者から通知が郵送されています。しかし開封するのも億劫、そして開いてみても意味が解らないなどはお決まりのこと。こうした点は、改良の話も聞こえてこないことに憂えてしまいます。

通帳のコピーや個人番号が必要な際は慎重に説明しながら、誤解がないように遠方に住むご家族にも併せて伝えながら対応します。しかしあるケースでは次のような発言が。県外にある全く関係ない他市町村の市役所に確認電話を入れた利用者さんもおり、少なからずショックを受けました。

「ケアマネジャーが突然通帳のコピーをよこせと言った。国で決めたことで今年からだと言うが、そんなことってあるのか? 人の家の通帳のコピーをくれなんて、ケアマネジャーでも言うまいに」

行政による制度の説明サービスとケアマネジャーにできる個別の支援のバランス

いくつか例を挙げてきました。冒頭ケースの「近所の人に聞いたのだけど……」といった内容の相談では、各種制度の多くで世帯収入により該当サービスや給付が異なるという点の理解と、どうしても感じてしまう不公平感があるのでしょう。

各家庭の抱える介護力や家計の悩みもあるので、ケアマネジャーとしては予測できる相談でもあります。今後もケアマネジャーによる都度の説明、そして聞き役になるということは支援の一つといえるでしょう。一方、制度の周知については、まず行政でもっと改善・努力の余地はあると思われます。

介護保険制度に関する業務は、保険者へ申請する書類を含めて、もちろんケアマネジャーの支援業務です。しかし「どうせモニタリング訪問で会うから」「ケアマネジャーだからやってほしい」という意味合いで全てを任せられてしまうことには、多少反発の気持ちを持ってしまいます。

個人経営で行っている居宅介護支援事業所では、制度の周知から手続き完了まで係る業務の手間や時間、経費に、ことさら敏感になることが多かったのではないでしょうか。

高齢者ファーストであるために

行政による「説明責任」では語弊と意味合いが異なってしまうので、「高齢者ファーストの説明サービス」と表現してはどうでしょう。封書を葉書にして、次のように大きな文字で書くのです。

「介護保険の有効期限が近づいています」

「新しく始まる介護保険の制度の案内です。ショートステイを利用している人はよく読んでください」

内容が理解できなくても、何の知らせかが分かるだけで意義があります。何事も個人情報の観点に結び付け、必要な改善を試みないことは野暮というもの。行政の範囲で最大限できる制度の周知の努力があって、初めて個別支援ときめ細やかなフォロー、手続きなどの協力をケアマネジャーが行うのが理想ではないでしょうか。

最近、実地指導や監査を経て、多くの介護サービス事業所や居宅介護支援事業所の指定取り消しが増加しています。その背景には、業務の多忙さにより手が回らない業務が多く発生していることが要因ではないかと切実に感じます。

サービス提供事業所、あるいは居宅介護支援事業所において、認知症高齢者が増加しています。これに加え、同居家族のいない世帯も増加している現状では、通常のサービス提供時間や最低限のモニタリング以外に、高齢者の支援や相談に関わる時間が多くなっているのではないでしょうか。

介護のある暮らしでは、介護される側とする家族の生活のバランスが重要であることは言うまでもありません。同様に、支援者である介護サービス事業所やケアマネジャー、そして行政で働く人たちも、心身とも健康・健全に業務できることが重要です。

最終的に利用者や家族にとって不利益が生じないよう、多くの制度や社会資源を必要とする人が効果的に活用できるためにも、支援者の役割や支援内容のバランスにもさらに焦点を当てていくことが重要だと思うのです。

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