雪国の介護〜巡る季節に対応できるか〜

2018-01-08

過日、県内全域の介護支援専門員(ケアマネジャー)が一堂に会する研修に参加しました。11月も後半になると県内のあちこちで初雪が降っていて、「道路状況はどうでしたか?」という言葉が挨拶代わりになっています。また、この時期になると担当している利用者様が今年の冬をいかに乗り切るかが介護支援専門員の共通の悩みとなっており、その苦労話も風物詩さながらです。今回は、雪の降る地域の介護について見ていきましょう。

雪が降ると変化する生活

全国的に高齢化率が上昇している中でも、当県の高齢化率はかなり高い水準にあります。子ども世代との同居率も低く、多くの世帯が高齢夫婦2人世帯か独居。お盆に子どもが帰省して初めて親に介護が必要と感じて慌てることも多く、「久しぶりに帰省したら親が認知症になっている。火の不始末が心配だ。冬、どうしよう」といった相談を持ち掛けられることが少なくありません。

認知症か否かの真相は定かではありませんが、雪のない季節はなんとか暮らしていても、寒くなり雪が降ってくると買い物に行くことができない。あるいは雪かきができなかったり、ストーブの灯油を入れることができなかったり、暖房の調整も上手くできるか不安だといった心配事が山積みのケースがあります。

少し物忘れはあるけれどなんとか暮らしている人や、認知症の診断はついていてもまだ自宅で頑張って暮らすことができる人もいるでしょう。そのようなケースでは、気候が温かいうちは家や庭先で活動でき、近所やスーパー、デイサービスなどに自分で支度をして出かけることができています。そのため、人目にも付きますし、関係者との交流があるので意識しなくとも安否確認がされている状況です。

しかし、雪が降って寒くなってくるとデイサービスに出かけるための準備が億劫になり、雪かきも大変です。何より帰宅したときに寒くて暗い家に戻ってくるのが辛いという理由で、冬は休みがちになる人も案外多くいます。病院受診も冬の間はお薬を3か月分処方されたりすると診察に通わなくても良いので、ありがたい反面、外出の機会は減ってしまうでしょう。体調変化に気が付く機会も失われてしまいます。独居や高齢世帯で普段なんとかギリギリで暮らすことができている人は、冬になると一気に活動時間や人との関りが減ってしまうことが考えられるのです。

ショートステイでの越冬

雪が降ると除雪ができない。シルバー人材センターも手一杯で、他に頼むことができるサービスや社会資源もない。あるいは、頼める近所の人や知り合いもいないような高齢化率の高い地域では、少しの手助けがあれば冬も自宅で暮らすことができるのに環境が整わないという理由で、ショートステイの利用を検討するケースが多く見られます。

介護支援専門員はアセスメントの結果から、冬の間は環境の整ったショートステイで過ごしましょうという結論に至ります。しかし「越冬」のためのショートステイ探しはお盆以降から始まり、12月を迎えるころには地域のショートステイの冬期間のベッドが埋まってしまうことが例年続いている状況です。

自宅で冬を越す

それでも、安易にショートステイに行くと決めるケースばかりではありません。環境が整い、介護の手があるショートステイの利用は、例えば急変や暖房機器からの火事などのリスクを回避できるので、家族や介護支援専門員は安心です。しかし本人にとっては、急激な環境の変化や刺激が少な過ぎたり、本人の意向と大きく違う毎日となったりすると、物忘れや認知症が進行してしまうことがあります。越冬のつもりが、春になっても家に帰ることができなくなってしまう可能性があるのです。

介護が必要になっても自宅で冬を越すためには、どんな支援が必要でしょうか。実際のケースでは、主に通所サービスや訪問サービスを温かい期間に比べてより多く導入することになるでしょう。

社会資源が十分にない地域では、関わるサービス提供事業所(ケアチームのメンバー)がボランティア的に行うこともあります。例えば、訪問介護では除雪はケア内容に入れることはできませんが、「自分たちが歩くため」にということで車に雪かきベラを積んでいます。サービス内容の変更は当然冬仕様になっており、ごみ捨てや灯油の給油などが追加されているのです。

デイサービスなどの通所サービスでも、やはり送迎車に自分たちが歩くための雪かきベラを積んでいます。また、利用日でなくても毎日の送迎の行き帰りに自宅のカーテンが開いているか、電気がついているかなどの目配りを自然としてくれています。

自然発生的に周囲がしている目配り、情報収集

介護で関わるケアチームは、高齢の一人暮らしの方の冬期間の暮らしにおいて、温かい時期とは異なる視点からより目配りを多くしてリスク回避を自然と意識しています。それでもヘルパーさんが訪問したら、自宅で倒れていたということも実際にはゼロではありません。

あるケースではヘルパーさんが午前のケアのために訪問したところ、利用者様がベッド付近で布団を半分めくった状態で意識を失っているのを発見して救急車を要請しました。倒れてから何時間くらい経つのか、誰も分かりません。しかし毎日訪問しているヘルパーさんの「就寝時につける寝室の電球が消されていた」という話や朝ご飯のためにセットした炊飯器の保温時間の表示などから、朝方に一旦起床した後で布団に戻った際に意識を失ってしまったのではないかと推測できました。ケアプランにはないことでも自然に気配りや観察がされていること、また、普段の関わりから様々な情報を持っている人がいると、独居でも暮らしぶりが予測できます。

介護が必要となっても、地域で自立して暮らしていくことを目指している社会。しかし少子高齢化によって、理想が理想で終わってしまう地域もあるのではないでしょうか。自然発生的に社会資源となり得る地域住民の見守りができている地域もありますが、このケースのように結局は介護保険サービスの利用、ケアチームの内の見守りしかない場合もあります。

まとめ

冬の寒さや雪の始末は、自宅で暮らしている高齢者にとって大きな問題です。自宅で冬期間暮らし続けるには、介護保険サービスや社会資源で補いきれないことばかり。そのため、家族も介護支援専門員もリスクを払拭できず、二の足を踏んで安易にショートステイの利用を調整しがちです。

しかしこれは、地域包括ケアシステムの理念に逆行しているとは言えないでしょうか。本当に必要な介護サービスの提供は仕方がないでしょう。しかし同一のケースがあまりに多いと、国の思い描いている方向性が現状と乖離しているのではないかと思ってしまいます。

雪国ならでは悩み、逆に夏の暑さに悩まされている県もあるかもしれません。例えば社会資源の構築には「地域の特色を知る」ということが欠かせないということは、主任介護支援専門員テキストにも書かれています。もちろん、研修でもよく耳にするでしょう。では具体的に何を、誰が行うのか。それが今必要です。

まだ若くて元気に働いている人でも、夏は暑くて少し動いても汗が吹き出してしまいます。夢中で仕事をしていると水分を摂らないことも多く、頭がクラクラするときがあるかもしれません。雪が降ると出社前に雪かきを行い、寒い中ごみを集積場まで運ぶことも億劫。これが、高齢者だと命がけです。

社会資源の構築が叫ばれている今、国の示すシステムに沿って行政がホームページに様々なチェック表や各種サービスをアップしています。しかし、季節や地域の特性に沿った独自の物は見当たりません。逆に言えば国が示しているものが揃えられているだけです。

少子高齢化が急速に進んでスピード感が求められる今、季節の変化にこそ対応でき高齢者が自宅で暮らしていくことができる支援やサービスは、行政主導でしかできないと個人的に考えています。医療・介護・保険・地域一体の理想郷は一つではありません。そして、季節は巡るのです。

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