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「この人のケアマネジャーは誰だ!?」〜ケアマネジャーのせいなのか〜

2018-04-02

介護を必要とする高齢者に必要な介護サービスや支援を継続的に受けられるよう、自治体や各事業者との連絡、調整を図ることを主な業務とするケアマネジャー。今後、多職種、多機関との連携や地域における多種多様な社会資源のコーディネートなど、ケアマネ不要論が唱えられつつも、国や保険者がケアマネジャーに求める役割は年々大きくなっていると感じます。

利用者に何か起きるとケアマネジャーのせいなのか

以前、このようなことがありました。ある高齢者が飲酒して自転車を運転し、道路で転倒したのです。辺りには心配して集まった人たち、そして救急車の音で集まってきた野次馬で黒山の人だかり。たまたまその様子が事業所から見えたのですが、駆け付けた救急隊の第一声は次のようなものでした。

「この人のケアマネジャーは誰ですか?分かる人はいますか?」

転倒した方は泥酔状態で、話のつじつまも合っていない様子。しかし、自分の名前は答えることができていました。集まった人たちも近所の人ばかりなので、「〇〇さんだよね。家に奥さんがいるはずだ」などと話しています。ケアマネジャーの仕事をしている身としては、この状況にギクッとしてしまいました。

認知症の方の徘徊ではこのようなこともありました。認知症で近所を徘徊しているAさん。万が一にも行方不明になってしまった時のため、市の事業である「認知症徘徊見守りネットワーク」への登録が検討されるケースです。

しかしご家族の意見は「行方不明になったときに市の防災無線で放送されるのも、大騒ぎして探し回られるのも嫌だ」と、登録を強く拒否されました。担当のケアマネジャーも、家族に拒否された以上は無理に登録できません。近所の徘徊はあっても歩くルートや立ち寄り先は大体決まっているので、まだ検討がつくということもあり家族の意向を尊重して登録はしませんでした。

しかし、いつもは1時間ほどで自宅に戻るはずのAさんが、2時間経っても戻りません。そのため、ご家族は警察に相談しました。するとその際にも、警察から次のように言われてしまったのです。

「ケアマネジャーは何をしているんだ」

ケアマネジャーとして、思い当たるいくつかの候補から、Aさんが立ち寄るであろう知り合いの家に連絡を取りました。結局、Aさんはその中の一軒の家に上がり込んで昼食を頂いており、無事に発見できました。

この出来事について、後日、市内で行われたケアマネジャーの研修会で進行を務めた市の担当者から、「ケアマネジャーが慌てたケース」として紹介されました。名前こそ出しませんが、悪例として唐突に取り上げられてしまったのです。

家族がいても、ひとり暮らしでもケアマネジャーは生活全体を支えることはできない

現役ケアマネジャー、特に居宅介護支援のケアマネジャーには、自分自身が社会資源であるかのような働きを無意識のうちにしている人も多いかと思います。家族がいても何らかの事情でできないことなどを、少し時間を割いてケアマネジャーが行っているかもしれません。一人暮らしでヘルパー支援に組み込めない用事も、ケアマネジャーが「今回だけは」「それくらいなら」と自分の時間を使い、別の用事のついでにしていることもあるでしょう。

ケアマネジャーが利用者の生活や人生の全てを支えることはできません。ですから仕事と割り切って、ケアマネジャーとしての業務以外は一切やらない方が良いのでしょう。しかし現実としては、そうはいかないことが多いはず。特に超高齢化社会にあって高齢者の一人暮らし率の高い地域では、やむを得ない事情が起きることも少なくありません。

虚しさを感じながらもやらなければならないこと

地域包括ケアシステムが始まったことにより、ケアマネジャーの業務はますますその範囲が曖昧になってしまいそうです。平成30年改正は「連携の改正」と言われるほど、医療職など多職種連携が重要視されています。評価されない業務、自身に落ち度のないことでも「ケアマネは誰だ」となってしまう。先の例のような言われようは日常茶飯事であり、虚しさを感じることも多いのです。

しかし、それでも超高齢化社会かつ少子高齢化の真っただ中にある現在、決められたことをやりきるしかありません。

そんな中、今年1月にケアマネジャーにとって朗報と呼べるニュースがありました。宮城県がケアマネジャーの登録を取り消す「消除要件」を、独自に緩和する方針を固めたのです。

さらに宮城県から国への要望が認められ、今春にも介護保険法が通常国会で改正される見通し。更新手続きの失念といった事情を勘案して救済措置を講じ、介護現場の人材不足に配慮する動きがあるのです。これはケアマネジャーの業務が過多であること、また、ケアマネジャーの高齢化に配慮したものとしています。

今後もケアマネジャーの業務実態や立場についてクローズアップされ、議論が行われることは増えていくことでしょう。そうなれば虚しさも薄れ、また頑張れるような気がします。

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