介護系施設で働く介護職員の悩みの一つに、利用者(入所者)の持ち物に関するものがあります。一般的に高齢者の方々は物持ちが良く、施設入所の際には衣類をはじめ、時計などの小物類は同じような持ち物を何種類も持参するなど、とにかく持ち物が多くなりがちです。そんな中、ショートステイ(短期入所)の利用者さんにも、例えば2泊3日の利用に対して日数にそぐわないほどの荷物を持ってくる方が見受けられます。持参すること自体は、決して悪いことではありません。しかし、持参した荷物が無くなってしまったり間違えてしまったりすることがあります。そのため施設側としては、できるだけ荷物は最小限で、貴重品などは避けて欲しいのが心情です。このような、ショートステイ利用者の持ち物忘れや荷物間違いを防ぐにはどうしたら良いのか。各施設で取り組まれている事例も交えながら解説していきます。
どの施設でも取り組んでいる基本的なことですが、持参した衣類には全て名前を書いてもらうようにしましょう。家族と同居していれば何の問題もありませんが、独居の場合や極端に名前を書くことを嫌がる利用者の場合、貼ってはがせるシールタグやリボンなども有効です。同じように、時計や湯呑みなど氏名を書くことが難しい小物にも、シールが有効でしょう。
リピーター利用に繋がっている利用者の中には、利用当初書いて頂いた氏名が洗濯などで消えかかっている場合もあります。そのため、相談員などが事前に家族確認を済ませておいて、施設側で書き直しておくことも重要です。
氏名記入を嫌がる方、あるいはシールの貼れない小物などは、必ずデジカメで写真を撮っておきます。その他、似たような衣類や小物についても写真で撮っておくことで、この利用者のものかどうか迷った際、記憶ではなく記録で確認することができるでしょう。デジカメで記録する際のポイントは、角度や裏表など、複数のアングルから撮ることです。
例えば利用後のご家族から「湯呑みが欠けていた」などと苦情があった場合、写真を見直せば、最初から欠けていたのか、本当に利用中に欠けてしまったのかを客観的に評価することにも繋がります。介護士自身の身を防衛するためにも、客観的な記録を残しておくべきでしょう。
施設によっては、持参した持ち物をチェックシートなどで残している場合もあるでしょう。持ち物チェックシートは、変速勤務などで日々入れ替わる介護職員にとって大事な申し送りの記録となります。
しかし、このチェックシートは一定のルールを決めておかないと、入所と退所の時に「衣類の枚数が合わない」等といった行き違いが生じてしまいます。具体的には、
「シャツは肌着を指すのか、Tシャツも含むのか」
「入所時に来ている衣類は枚数にいれるのか」
「貴重品は確認するのか、しない場合は事前に家族同意を得ておくのか」
など、介護それぞれの主観によって解釈が異なるものを無くしてあげることが大切です。
家族と同居、または訪問介護事業所等が利用前準備支援している方には、衣類袋等を施設側から事前に渡しておくことが有効です。巾着やジッパー付きビニール袋などを施設側が用意し、表面に収納する品目をリスト化し貼っておきましょう。その袋を事前に利用者宅へ渡し、家族や支援者はその品目リストを見ながら袋に必要なものを詰めていきます。
その際、衣類は一組ごとに詰めるのではなく、「上衣肌着○枚」「下着○枚」などその種類ごとで一括りにすると、間違えが少なくて済むでしょう。例えば1日分の衣類一組という括りにしてしまうと、生活歴から肌着2枚を日頃重ね着していた場合、介護士は1枚しか肌着を着ないだろうという思い込みから、退所時に枚数が合わなくなってしまうかもしれません。あるいは失禁した際など、その一組から下着だけ出してしまうと、あちこちでペアが合わなくなってしまうことも考えられるでしょう。そのため、できるだけ種類ごとにまとめることをオススメします。
利用者さんの荷物間違いや忘れ物は、施設で働く介護職員にとってなかなか改善しにくい悩みの種でしょう。まして、そういった荷物間違いからクレームへと発展してしまうケースも、最近では増加し続けています。せっかくしっかりとしたケアを行いたくても、こういった間接介護業務で失敗してしまうことを恐れ、確認などの手間ばかり増えて時間を浪費するのでは、本来すべき業務である介護業務に支障が出てしまいます。まずは自分たちにできることから取り組んでみて、余計な業務負担を減らしていきましょう。