日本の高齢化率(65歳以上人口の割合)は上昇を続け、介護サービスのニーズも増えています。このような社会情勢から、介護職員の確保、専門的な知識や技能を持った介護福祉士の育成・確保は、国をはじめ、各自治体の解決すべき課題となっています。そして、その解決に向けて介護職員の処遇改善、介護職の就職・復職のサポートなどが実施されています。
そのような取り組みを知って、「前に介護の仕事をしていて辞めちゃったけど、また介護の仕事戻ろうかな?」と考えている人は、以前取得した資格が今も有効なのか気になっていませんか?
ここでは、制度変更前の介護の資格である「介護職員基礎研修修了」の現在の取り扱いについて説明します。これから介護職として復職して、介護福祉士を目指している人は、ぜひご一読ください。
介護職員基礎研修とは?
介護職員基礎研修の概要
高齢化が進む日本において、介護職員の専門性を高めることが必要だと考えられていました。介護職員基礎研修は、施設・在宅を問わず、介護職員として介護のサービス質の向上を図るための内容を学習する研修として実施されていました。
介護職員基礎研修の実施主体は、都道府県知事から指定を受けた自治体や法人などで、全国各地で広く研修が開催されていました。
介護職員基礎研修の内容
介護職員基礎研修では、講義と演習を一体的に学習する「基礎理解とその展開」として360時間、施設での実習として140時間、合計500時間のカリキュラムが組まれていました。介護に関する知識と技術を習得し、広く介護業界において活躍することができる内容です。
介護職員基礎研修は現在も有効?
2020年現在、介護職員基礎研修という研修は受講できませんが、過去に修了した資格は現在も介護の仕事をする上では有効です。
2013年から介護職員の資格制度が見直されました。これは、2013年以前に複数存在していた介護福祉士取得までのルートが見直され、それに合わせて介護職員基礎研修制度とホームヘルパー研修制度が廃止され、新たに「介護職員初任者研修」「実務者研修」が創設されました。
介護職員基礎研修修了者が介護福祉士になるまでの流れ
介護職員基礎研修を修了した人が、介護業界で働く上で国家資格である介護福祉士を取得するまでの流れをご紹介します。以前までは、介護職員基礎研修を修了して、一定の実務経験を積むことで介護福祉士国家試験を受験することができましたが、現在その受験資格では受験できなくなっています。
介護福祉士の受験資格
2020年1月現在、介護福祉士の受験資格は、「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」「実務経験ルート」「EPAルート」のいずれかで満たす必要があります。その中でも、介護職員基礎研修を修了している皆さんは、実務経験ルートからの受験を考えているでしょう。
実務経験ルートとは、「実務経験3年+実務者研修修了」または「実務経験3年+介護職員基礎研修修了+喀痰吸引等研修修了」のどちらかで受験資格を満たすルートです。(実務経験は、介護業務等での従業期間が3年(1,095日)以上、かつ従事日数が540日以上)
介護福祉士の受験資格を満たすには?
先ほど説明したように、まずは実務経験3年以上を満たす必要があります。それと合わせて、「実務者研修」「喀痰吸引等研修」のどちらかを受講することになりますが、実務者研修は全国の資格のスクールで開催されているので、受講しやすいことから多くの介護職員基礎研修修了者に選ばれているようです。
介護職員基礎研修修了者が実務者研修を修了すると、これまで学習した科目の受講が免除されますので、受講する科目は「医療的ケア」と「医療的ケアの演習」になります。そのため、短期間で受講することができて、受講料金も割引された料金で受講することができます。
実務者研修のカリキュラム
科目 | 受講時間 | 介護職員基礎研修修了 |
---|---|---|
人間の尊厳と自立 | 5時間 | ○ |
社会の理解Ⅰ | 5時間 | ○ |
社会の理解Ⅱ | 30時間 | ○ |
介護の基本Ⅰ | 10時間 | ○ |
介護の基本Ⅱ | 20時間 | ○ |
コミュニケーション技術 | 20時間 | ○ |
生活支援技術Ⅰ | 20時間 | ○ |
生活支援技術Ⅱ | 30時間 | ○ |
発達と老化の理解Ⅰ | 10時間 | ○ |
発達と老化の理解Ⅱ | 20時間 | ○ |
認知症の理解Ⅰ | 10時間 | ○ |
認知症の理解Ⅱ | 20時間 | ○ |
障害の理解Ⅰ | 10時間 | ○ |
障害の理解Ⅱ | 20時間 | ○ |
こころとからだの仕組みⅠ | 20時間 | ○ |
こころとからだの仕組みⅡ | 60時間 | ○ |
介護課程Ⅰ | 20時間 | ○ |
介護課程Ⅱ | 25時間 | ○ |
介護課程Ⅲ | 45時間 | ○ |
医療的ケア | 50時間 | 50時間 |
合計 | 450時間 | 50時間 |
※免除科目を「○」で表示しています。また、上記以外にも医療的ケアの演習を受講する必要があります。
実務者研修はどこで受講できるの?
実務者研修は、「通学コース」と「通信+通学コース」があり、全国の資格のスクール等で開講されています。「お住まいの地域×実務者研修」で検索をすると、お近くのスクールが簡単に探せるでしょう。その他にも、複数のスクールの一括資料請求ができるwebサイトや比較しているwebサイトがあるので、このようなwebサイトを利用したり、参考にするのも良いでしょう。
喀痰吸引等研修はどこで受講できるの?
喀痰吸引等研修を実施している登録研修機関や研修日程は各都道府県のホームページに掲載されています。各都道府県のホームページから開講している団体を探し、登録研修機関に直接問い合わせましょう。
まとめ
介護職員基礎研修を修了した皆さんにとっては、介護の資格制度改正によって介護福祉士の受験資格を得るまでの条件が増えてしまったことになります。しかし、受講する喀痰吸引等の医療的ケアは、介護福祉士を取得してから仕事をする上で必要になる知識、技術です。ぜひ実務者研修・喀痰吸引等研修を受講して、介護福祉士を目指しましょう。
監修者 カイゴジョブ編集部
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