介護職として就職・転職を考えている皆さんは、「介護職に退職金ってあるの?」や「退職金っていくらもらえるの?」といった疑問をお持ちではないでしょうか?
この記事では、介護職の退職金について詳しく説明していますので、ぜひ最後までお読みください。
介護職・介護士の退職金の有無
まずは、介護職に退職金制度があるかどうかについてですが、『退職金制度がある職場は多い』という回答になります。
公益財団法人介護労働安定センターの『平成24年度介護労働実態調査』によると、正規職員の『63.7%』が退職金制度があると回答しています。しかし、雇用契約が非正規職員では退職金制度に加入できないケースや運営法人の法人格によって退職金制度の有無の比率に大きな差が出ていました。
雇用形態による退職金制度の有無
雇用形態 | 退職金制度あり | 退職金制度なし | 無回答 |
---|---|---|---|
正規職員 | 63.7% | 30.2% | 6.2% |
非正規職員(非常勤労働者) | 5.0% | 77.0% | 18.0% |
正規職員の法人格別の退職金制度の有無
法人格 | 退職金制度あり | 退職金制度なし | 無回答 |
---|---|---|---|
社会福祉法人 | 93.3% | 4.5% | 2.2% |
医療法人 | 89.5% | 6.2% | 4.4% |
介護職・介護士の退職金制度の仕組みとは?
それでは、介護職として就職するとどのような退職金制度に加入できるのでしょうか?
ここでは、退職金制度として代表的な『福祉医療機構の退職金制度』と『従事者共済会の退職金制度』についてご紹介します。
独立行政法人福祉医療機構の退職金制度
福祉医療機構は、福祉の増進と医療の普及向上を目的として設立された独立行政法人です。福祉や医療の基盤整備を進めるために、貸付事業、経営サポート事業、社会福祉施設職員のための退職手当共済事業などを行っています。
この退職手当共済制度には、社会福祉法人が運営する社会福祉施設・特定介護保険施設等で従事する職員だけが加入できることになっています。また、特徴として掛金をすべて事業者が負担することが挙げられます。
退職金の支給額は、本俸月額から計算される『計算基礎額』に、共済に加入していた期間や退職理由に応じて定められている『支給乗率』を掛けて計算されます。
都道府県の従事者共済会の退職金制度
ここでは、例として東京都社会福祉協議会が実施する従事者共済会についてご紹介します。
従事者共済会では、民間の社会福祉施設・団体で働く職員の福利増進を図ることを目的として、退職共済金の給付、貸付金事業、福利厚生に関する事業などを行っています。
社会福祉法人に限らず福祉事業を行う団体等が加入でき、契約施設・団体に勤務する有給の役員及び職員が加入の対象となっています。特徴として、掛金が加入者の本俸により金額が決まること、掛金の負担が契約者(事業主)と加入者(従事者)の折半で負担することが挙げられます。
退職金の支給額は、加入期間の『平均標準給与月額』に、加入期間に応じて設定されている『給付率』を掛けて計算されます。
退職金制度の継続異動、転出・転入について
これらの退職金制度は、事業者が運営している退職金制度と違い、『福祉施設の職員の福利』のために事業者以外の団体が運営しています。そのため、働いていた法人・施設を退職した場合でも、同じ退職金制度に加入する別の法人が運営する施設等に期間を空けずに就職した場合、これまでの掛金を持ち越して継続加入することができるようになっています。
退職金制度は、加入している年数が長くなれば長くなるほど支給額の計算に使用する『率』が上がるので、継続して加入できることがメリットとなっています。
介護職・介護士の退職金はどれくらいもらえるの?
先ほどご紹介した2つの退職金制度に加入していた場合、どれくらいの退職金が支給されるのでしょうか?
それぞれ本俸月給18万円の人が10年間加入した場合で、支給額を計算していますので見ていきましょう。
退職金の支給例①福祉医療機構・10年加入・月給18万円
本俸月額は15,000円区切りで区分が設けられているので18万円の場合、175,000円~189,999円の範囲に該当し、計算基礎額は『175,000円』となり、加入期間が10年間の場合の支給乗率は『5.2200』となります。
【計算式】
175,000円 × 5.2200 = 913,500円
このように支給額は、『913,500円』となります。
退職金の支給例②民間社会福祉事業共済会・10年加入・月給18万円
本俸月額の金額によって区分が設けられているので18万円の場合、175,000円~185,000円の範囲に該当し、標準報酬月額が『180,000円』、1ヵ月の掛金は『8,280円』となり、この半分の4,140円を毎月皆さんが負担することになります。加入期間が10年間の場合の給付率は『5.7448』となります。
【計算式】
180,000円 × 5.7448 = 1,034,100円(100円未満切り上げ)
このように支給額は、『1,034,100円』となります。
勤続年数何年から退職金がもらえるの?
今回ご紹介した退職金制度は、加入から1年以上経過すると支給されることになっています。ですから加入してから1年未満で退職した場合には支給されないことになります。また、福祉医療機構の退職金は、犯罪行為等による退職の場合には支給されないことになっています。
まとめ
説明してきたように、介護職の退職金は就職する法人・事業所によって異なっています。
就職・転職をする上で、給料と同じく、「退職金制度があるのか?」、「どのような退職金制度に加入しているのか?」ということは重要なチェックポイントになるでしょう。
ここでご紹介した内容が皆さんの介護職としての就職・転職のお役に立てばうれしいです。最後までお読みいただきありがとうございました。
監修者 大久保典慶
社会福祉士、介護福祉経営士1級。介護・老人福祉事業を幅広く展開する社会福祉法人で9年の経験を経て、株式会社エス・エム・エスに入社。介護・福祉に関わるコンテンツ制作の編集業務を担う。