第24回 精神保健福祉士国家試験の過去問と解答(2022年2月5日・6日実施)

第24回 精神保健福祉士国家試験の過去問と解答(2022年2月5日・6日実施)

第24回 精神保健福祉士国家試験(2022年2月5日・6日実施)の過去問題と解答をご紹介します。

過去問:第24回 精神保健福祉士国家試験 解答(2022年2月実施)

精神疾患とその治療

問1 問2 問3 問4
1 2 2 5
問5 問6 問7 問8
1 4,5 2 3
問9 問10
4 1,4

精神保健の課題と支援

問11 問12 問13 問14
3 2 3 3,4
問15 問16 問17 問18
1 2,4 5 2
問19 問20
3 5

精神保健福祉相談援助の基盤

問21 問22 問23 問24
1 2,5 4 4
問25 問26 問27 問28
5 5 1 3,4
問29 問30 問31 問32
2 5 1,3 1
問33 問34 問35
3,5 2 1

精神保健福祉の理論と相談援助の展開

問36 問37 問38 問39
2 2 4 1
問40 問41 問42 問43
3 5 4 5
問44 問45 問46 問47
3 3 4 4
問48 問49 問50 問51
1 2,3 5 4
問52 問53 問54 問55
4 3,5 1 2
問56 問57 問58 問59
5 4 2 1
問60
2

精神保健福祉に関する制度とサービス

問61 問62 問63 問64
3,5 1 5 1
問65 問66 問67 問68
1 4 5 2
問69 問70 問71 問72
3 4 3 2

精神障害者の生活支援システム

問73 問74 問75 問76
5 1 5 1
問77 問78 問79 問80
3 1 3 2,4

人体の構造と機能及び疾病

問1 問2 問3 問4
1,2 3 2 5
問5 問6 問7
4 2 4

心理学理論と心理的支援

問8 問9 問10 問11
2 5 4 5
問12 問13 問14
3 4 1

社会理論と社会システム

問15 問16 問17 問18
2 1 5 2
問19 問20 問21
4 3 3

現代社会と福祉

問22 問23 問24 問25
4 2 2 3
問26 問27 問28 問29
3 3,4 1 1
問30 問31
4 5

地域福祉の理論と方法

問32 問33 問34 問35
3 2 2 1,4
問36 問37 問38 問39
5 1 4 5
問40 問41
1,3 3

福祉行財政と福祉計画

問42 問43 問44 問45
1 5 1 3
問46 問47 問48
2 5 3

社会保障

問49 問50 問51 問52
3 4 1 5
問53 問54 問55
3 2 5

障害者に対する支援と障害者自立支援制度

問56 問57 問58 問59
2 4 1 5
問60 問61 問62
3 2 1

低所得者に対する支援と生活保護制度

問63 問64 問65 問66
3 5 5 4
問67 問68 問69
1 5 2

保健医療サービス

問70 問71 問72 問73
3 5 5 2
問74 問75 問76
1 2 4

権利擁護と成年後見制度

問77 問78 問79 問80
5 4 3 4
問81 問82 問83
2 1 4

第24回 精神保健福祉士国家試験の合格基準点(1問1点)

101点/163問

第24回 精神保健福祉士国家試験 過去問題(2022年2月実施)

精神疾患とその治療

問題1

次のうち、18世紀に精神障害者を鎖から解放し、人間的な処遇を提唱した人物として、正しいものを1つ選びなさい。

1 ピネル(Pinel, P.)

2 呉秀三

3 クレペリン(Kraepelin, E.)

4 カールバウム(Kahlbaum, K.)

5 アルツハイマー(Alzheimer, A.)

問題2

次の記述のうち、脳の各部位の働きとして、正しいものを1つ選びなさい。

1 大脳皮質は情動をつかさどる。

2 延髄は呼吸をつかさどる。

3 小脳は体温調節をつかさどる。

4 視床は食欲をつかさどる。

5 視床下部は平衡感覚をつかさどる。

問題3

Aさん(25歳、男性)は、職場でパワーハラスメントにあったことで、意欲低下や食欲低下、不眠などが続き出勤できなくなった。人事担当者は産業医及びAさんと相談し、部署を異動させたところ、Aさんの症状は7日後に改善した。

次のうち、Aさんの病名として、適切なものを1つ選びなさい。

1 境界性パーソナリティ障害

2 適応障害

3 双極性感情障害

4 病気不安症

5 心的外傷後ストレス障害(PTSD)

問題4

次の記述のうち、特に誘因なく発症したうつ病の患者への、急性期における家族からの声かけとして、適切なものを1つ選びなさい。

1 「早く治ってくれないと困る」

2 「仕事は辞めた方がよい」

3 「あなたはうつ病ではないと思う」

4 「旅行をして気分転換しましょう」

5 「大切なことを決めるのは後にしましょう」

問題5

Bちゃん(3歳、男児)は、同年代の子どもと一緒に遊べないことと、言葉の遅れがあるために病院を受診し、自閉スペクトラム症と診断された。お気に入りのぬいぐるみが複数あり、どこに行くにもそのぬいぐるみを持って行かないと気が済まない。帰宅すると、ぬいぐるみを決まった順番で、壁際に並べる。

次のうち、Bちゃんに認められる症状として、適切なものを1つ選びなさい。

1 こだわり

2 妄想

3 自我障害

4 分離不安

5 身体依存

問題6

次の記述のうち、予後がよいと推測される統合失調症の特徴として、適切なものを2つ選びなさい。

1 解体型の病型である。

2 緩徐に発症する。

3 若年で発症する。

4 発症に明らかな誘因がある。

5 発症してから未治療の期間が短い。

問題7

Cさん(18歳、男性)は、「部屋の中に隠しカメラがある」と3か月前から執拗(しつよう)に訴えるため、心配した両親と共に精神科を受診した。Cさんはリスペリドンを処方され、服用を始めた2日目の夕方より、「足がむずむずする」「じっとしていられないので、部屋の中を歩き回ってしまう」と強く訴えた。

次のうち、Cさんに2日目の夕方より現れた症状として、正しいものを1つ選びなさい。

1 ジストニア

2 アカシジア

3 ジスキネジア

4 カタレプシー

5 ミオクローヌス

問題8

次のうち、精神分析療法に最も関係の深い概念として、正しいものを1つ選びなさい。

1 自動思考

2 治療共同体

3 無意識

4 あるがまま

5 オペラント条件づけ

問題9

30歳前後に見える男性は、意味不明の独り言を発しながら、深夜に海岸を一人で歩いていたため、警察に保護された。警察官からの、「何をしていたのか」という問いかけに、「分からない」と答えた。付き添っている人はおらず、「名前や住所は覚えていない」と言い、身元が分かるようなものは所持していなかった。精神疾患を疑った警察官が精神科病院の受診につなげた。1名の精神保健指定医が診察したところ、暴れることはなく、頭部外傷などの身体面に緊急の治療を要する病変や自殺念慮も認められなかった。本人は入院による精神科治療が必要と認めなかったが、精神障害があるため、入院治療が必要と判断された。

次のうち、この時点における男性の入院形態として、適切なものを1つ選びなさい。

1 緊急措置入院

2 措置入院

3 医療保護入院

4 応急入院

5 任意入院

問題10

アルコホーリクス・アノニマス(AA)に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。

1 自助グループである。

2 自立支援医療(精神通院医療)の対象である。

3 心理専門職によるカウンセリングが目的である。

4 メンバーの無名性を基礎におく。

5 参加するためには医師の診断書が必要である。

精神保健の課題と支援

問題11

次のうち、ライフイベントとストレスとの相関に関する「社会的再適応評価尺度(Social Readjustment Rating Scale)」の開発者として、正しいものを1つ選びなさい。

1 セリエ(Selye, H.)

2 フロイト(Freud, S.)

3 ホームズ(Holmes, T.)

4 エリクソン(Erikson, E.)

5 キューブラー・ロス(Kubler-Ross, E.)

問題12

次のうち、著名人の自殺に関する報道の後で自殺者数が増加する現象を説明する用語として、正しいものを1つ選びなさい。

1 ハロー効果

2 ウェルテル効果

3 カクテルパーティ効果

4 キャリーオーバー効果

5 ピグマリオン効果

問題13

次のうち、「DV防止法」において、配偶者からの身体に対する暴力を受けた被害者の申立てにより、配偶者に保護命令を発することができる機関として、正しいものを1つ選びなさい。

1 配偶者暴力相談支援センター

2 福祉事務所

3 裁判所

4 警察署

5 婦人相談所

(注) 「DV防止法」とは、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」のことである。

問題14

次のうち、発達障害者支援法に規定されているものとして、正しいものを2つ選びなさい。

1 精神障害者保健福祉手帳の交付

2 自立支援医療費の支給

3 社会的障壁の定義

4 発達障害者支援センターの指定

5 職場適応援助者の養成

問題15

次のうち、「ストレスチェック」の実施において、厚生労働大臣の定める研修を修了することなく、かつ労働者の健康管理等に従事した経験を有することなく検査の実施者となることができる者として、正しいものを1つ選びなさい。

1 保健師

2 公認心理師

3 看護師

4 精神保健福祉士

5 理学療法士

(注) 「ストレスチェック」とは、「労働安全衛生法に基づく心理的な負担の程度を把握するための検査」のことである。

問題16

次のうち、セクシュアリティに関する記述として、適切なものを2つ選びなさい。

1 ジェンダーは、身体的性別を指す言葉である。

2 性別違和は、DSM-5で採用された用語である。

3 性的指向は、自己の性をどのように認識しているのかを示す概念である。

4 トランスジェンダーは、生物学的・身体的性と性自認が一致しない人を表す言葉である。

5 性同一性は、人の性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念である。

問題17

次のうち、被災者の心理的変化に関して、徐々に疲労が蓄積していくとともに、被災者同士の間で強い連帯感が生まれる時期として、適切なものを1つ選びなさい。

1 茫然(ぼうぜん)自失期

2 再建期

3 幻滅期

4 無感覚期

5 ハネムーン期

問題18

次のうち、都道府県及び市町村が「精神障害者の社会復帰及びその自立と社会経済活動への参加に対する地域住民の関心と理解を深めるように努めなければならない」と条文に明記されている法律として、正しいものを1つ選びなさい。

1 精神保健福祉士法

2 「精神保健福祉法」

3 「医療観察法」

4 「障害者総合支援法」

5 「障害者虐待防止法」

(注)1 「精神保健福祉法」とは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。

2 「医療観察法」とは、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。

3 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

4 「障害者虐待防止法」とは、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。

問題19

次のうち、疾患による損失生存年数と障害生存年数の合計で表される指標として、正しいものを1つ選びなさい。

1 DUP

2 ADL

3 DALY

4 QOL

5 SDGs

問題20

WHO(世界保健機関)の取組に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。

1 国際疾病分類の改訂版では、DSM-5を採用している。

2 オタワ憲章は、障害を3次元で分類している。

3 メンタルヘルスアトラスプロジェクトは、構造化面接法を用いて世界各国における精神疾患の罹患(りかん)率を調査した研究事業である。

4 「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」は、世界の酒類の製造又は販売を行う事業者に向けた警告のための広告戦略である。

5 メンタルヘルスギャップアクションプログラム(mhGAP)は、特に中低所得国における精神・神経・物質使用の障害へのケアを拡充することを目的にしている。

精神保健福祉相談援助の基盤

問題21

D精神保健福祉士はカンファレンスにおいて、Eさん(30歳)の退院を検討するために、今後、利用可能な社会資源に関連する情報をホワイトボードに図示して説明した。Eさんは、自宅への退院に備えて宿泊型自立訓練の体験をしていた。その一方、父親との折り合いが悪いことから、Eさんは以前に支援を受けていた市の保健師にも相談し、グループホームの見学も行った。また、日中については、友人のいるコンビニエンスストアで働くか、就労プログラムを実施している就労移行支援事業所又は精神科デイケアの利用を考えている。

次のうち、D精神保健福祉士がカンファレンスでの説明において、情報を図示したツールとして、適切なものを1つ選びなさい。

1 エコマップ

2 ファミリーマップ

3 ジェノグラム

4 ソシオグラム

5 タイムライン

問題22

次の記述のうち、ソーシャルワークの原理に基づく実践として、適切なものを2つ選びなさい。

1 ホームレスに至った原因を特定するため、環境要因よりも個人要因を重視し分析する。

2 住民との協働による、課題の早期発見や見守りを推し進め、事前対応型の予防的支援を展開する。

3 多機関に所属する専門職からなるチームを統括し、クライエントの生活を総合的かつ包括的に援助するように指揮する。

4 セルフネグレクトの状態にあり、援助を拒む住民には、相談窓口に来所するよう強く働きかける。

5 地域の福祉ニーズを的確に把握し、必要なサービスが不足している場合にはそれらを創出する。

問題23

次の記述のうち、ソーシャルワークの実践モデルとして、正しいものを1つ選びなさい。

1 環境との交互作用に焦点を当て、適応状態を捉えるモデルを治療モデルという。

2 クライエントが語る物語に着目し、問題を定義するモデルを医学モデルという。

3 問題の原因を個人の病理現象から見いだし、それを取り除くことにより解決するモデルを生活モデルという。

4 クライエントの肯定的態度や能力に着目し、主観性を尊重するモデルをストレングスモデルという。

5 蓄積された統計データを用いて、問題の原因を特定するモデルをナラティブモデルという。

問題24

次の記述のうち、精神保健福祉士が行う地域生活支援として、適切なものを1つ選びなさい。

1 通院中のクライエントに、服薬は自己管理ではなく親に委ねるよう指導した。

2 通院中のクライエントに自炊を始めたいと相談され、社会復帰プログラムのある病院への入院を勧めた。

3 企業への就職を希望するクライエントに、就労継続支援B型事業所を紹介した。

4 闘病体験を同じ病を抱えた人に役立てたいクライエントに、ピアサポート活動を紹介した。

5 一人暮らしを希望するクライエントに、経済的なめどが立ってから相談を開始すると伝えた。

問題25

次の記述のうち、精神保健福祉士のバーンアウトを表す状況として、正しいものを1つ選びなさい。

1 初めてクライエントの家を訪問し、その生活実態を目の当たりにして、仕事を続けていく自信が揺らいだ。

2 就職後、デスクワークが多く、思っていたほどクライエントと向き合う時間を確保することができなかった。

3 同期の精神保健福祉士がクライエントとすぐに打ち解けている姿を見て、自信を失った。

4 入職1年目の精神保健福祉士が、アルコール依存症のクライエントの再飲酒、再入院に直面し、無力感を抱いた。

5 長期間、複数のクライエントの困難な状況に対応していたが、相次ぐクライエントの入院によって疲労困憊(こんぱい)になった。

問題26

次の記述のうち、精神保健福祉に関わる専門職等の役割について、正しいものを1つ選びなさい。

1 退院後生活環境相談員は、包括型地域生活支援プログラム(ACT)で訪問を行う。

2 生活保護現業員は、リワークプログラムにおいて就労に関するアセスメントを行う。

3 社会復帰調整官は、精神障害者保健福祉手帳の交付の判定を行う。

4 精神保健福祉相談員は、精神科デイ・ケアで集団生活への適応訓練を行う。

5 精神障害者雇用トータルサポーターは、職場実習先の開拓及び実施のための事業所への助言や調整を行う。

問題27

就労移行支援事業を利用していたFさんは、運送会社の配送準備業務に従事し3週間が経過した。ある日、仕事帰りに事業所に立ち寄り、担当であるG精神保健福祉士に、「ミスしないようにと考えすぎなのか緊張が続き、疲れが取れません。これからも頑張っていきますが、紙に書いて丁寧に指示するという就職前の約束が実行されないので、困っています」と話した。G精神保健福祉士は話を整理し、「私の方から人事担当者に改めて話します」と答えた。

次のうち、G精神保健福祉士の対応の基となる考え方として、適切なものを1つ選びなさい。

1 社会モデル

2 クラブハウスモデル

3 社会的目標モデル

4 医療モデル

5 相互作用モデル

問題28

次のうち、精神保健福祉士が、守秘義務よりも第三者への情報提供を優先する場合として、適切なものを2つ選びなさい。

1 外部の専門家からスーパービジョンを受ける場合

2 家族から、クライエントが面接中に話した内容を教えてほしいと依頼された場合

3 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合

4 施設従事者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合

5 外部の人から、クライエントの病名を尋ねられた場合

問題29

次の記述のうち、精神保健福祉士が行う精神障害のあるクライエントへの援助の方針として、適切なものを1つ選びなさい。

1 がんの治療を受けている親と二人で暮らすクライエントに、就労移行支援事業所の利用は控えることを提案する。

2 通院しながら子育てをするうつ病のクライエントに、ファミリー・サポート・センター事業の利用を提案する。

3 親を介護しながらアルコール依存症で通院するクライエントに、自助グループの利用をやめて介護に専念することを提案する。

4 グループホームに入居したクライエントに、これまで使っていた通所型サービスの中断を提案する。

5 障害福祉サービス事業所が判定する障害支援区分に応じたサービスを提案する。

(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題1)

次の事例を読んで、問題30から問題32までについて答えなさい。

〔事 例〕

大規模自然災害が発生したN市保健所のH精神保健福祉士は、チームの一員として被災直後の被災地域の全戸訪問を行った。Jさん(22歳、男性)の自宅を訪問したところ、父親から、「Jは、高校卒業後に勤めた会社を半年で心身の不調を訴え退職し、ここ数年は、近所へ買物に外出する以外は自室にて過ごすようになっていた。被災後からは近所の手伝いも率先して行い、表情も明るくなり、近所の人からも本当に助かっていると言われていた。また具合が悪くならなければよいが」とJさんを心配する話を聞いた。そこで、チーム内でJさんについての情報を共有し検討した結果、継続したフォローアップが必要であると判断され、H精神保健福祉士がJさんを担当することになった。(問題30)

全戸訪問から8か月後、Jさんの父親が来所して面接することになった。面接で父親は、「Jは、手伝いをきっかけに紹介された仕事に就くことになり、家族みんなでとても喜んだ」と話した。しかし、その後沈黙が続いたため、H精神保健福祉士が尋ねると、疲れ切った様子で、「実は3か月前からJの具合が急に悪くなって」と話し始めた。「Jは、元気に働き始めましたが、そのうち帰宅しても話もせず、すぐに自室に籠もってしまい顔を合わせないことが多くなりました。また、時折、自室から嗚咽(おえつ)が聞こえてきたため心配して声をかけましたが、大丈夫だと返答するので、そっとしておきました。そして1か月前から、出勤時間になっても自室から出てこない日が続き、現在は欠勤が続いています。あなたから何回か訪問の提案をいただいていましたが、いつもJは私たちに断れと言っていたんです」と語った。(問題31)

父親の話を聞いたH精神保健福祉士は、Jさんの家族との面接を継続するだけでなく、Jさんに対して介入を行う必要性を感じた。(問題32)

問題30

次の記述のうち、この時点において、チームでJさんについての情報を共有し、継続したフォローアップが必要だと判断した理由として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 Jさんが、両親の期待に応えようとしていると考えられたため。

2 Jさんが、他者との関係を持つと調子を崩すと考えられたため。

3 Jさんが、経済的な困難を訴える可能性が考えられるため。

4 Jさんが、チームをまとめるリーダーになる可能性が考えられるため。

5 Jさんが、無理をして頑張っている状態だと考えられたため。

問題31

次の記述のうち、この時点の面接におけるH精神保健福祉士のJさんの家族に対する支援として、適切なものを2つ選びなさい。

1 家族の自尊心を高めるために、これまでの対応を高く評価する。

2 家族の認知のゆがみを修正するように促す。

3 父親の話を受容する。

4 Jさんの病気や障害について説明をする。

5 Jさんの生活技能を向上させるための訓練を行うことを提案する。

問題32

次の記述のうち、この時点でH精神保健福祉士が行う援助として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 Jさんの両親に、Jさんに宛てた手紙を渡してもらうようお願いする。

2 市内にある精神科クリニックの医師に、往診を依頼する。

3 精神保健福祉センターに、訪問を依頼する。

4 Jさんの様子を確認してもらうため、勤務先の上司に訪問を依頼する。

5 Jさんの両親に、一時的にJさんと離れて生活することを提案する。

(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題2)

次の事例を読んで、問題33から問題35までについて答えなさい。

〔事 例〕

Kさん(39歳)は、夫のLさん(43歳)と小学生の子ども(9歳、女児)の3人家族である。結婚して以来、Lさんは、Kさんの交友関係を絶たせ、最低限の食費のみを渡し、家計を細かく管理した。また、Lさんの思い通りに家事ができていないとKさんに殴る、蹴るなどの暴力を振るった。今回、Kさんを守ろうとした子どもにも暴力を振るったため、これを機にKさんは子どもを連れて家を離れ、福祉事務所を通じて母子生活支援施設に入所した。入所初期のKさんの話は混乱していたが、担当のM母子支援員(精神保健福祉士)は丁寧に対応し、「外から聞こえる足音が夫のような気がして怖い」「夫から離れたいけど無理かもしれない」「子育てのことも負担」ということを聞き取った。(問題33)

施設でのKさんはLさんに強いられていた生活のルールを強迫的に守ろうとし、言うとおりにしないとLさんにされたように子どもを叱責した。また、職員や他の入居者の言動を被害的に捉えて、相手を攻撃することが多かった。曖昧な対応をする職員には、「いい加減なことを言わないでほしい」と強く責めたてるため、ケース会議でKさんのことを取り上げた。(問題34)

Lさんは、A相談員(精神保健福祉士)が対応する市役所の男性相談窓口を訪れ、「暴力を振るっていた父のようになりたくなかった。理想の家庭を作りたくて、家事や育児も言うとおりにできない妻を導いてきたつもり。それなのに妻は子どもを連れて出て行った。妻だけでなく今回は子どもにも手を出してしまったので、自分でも変わらないといけないと思うが、どうしたらよいか分からない」と話した。A相談員は、「自分の行動についてなんとかしたいと思っているのですね。自分の行動を整理してみませんか」と伝えて、県内で開始されていたNPO法人が実施している事業・活動を紹介した。(問題35)

問題33

次のうち、この時点でM母子支援員が優先して取り組むKさんへの支援として、適切なものを2つ選びなさい。

1 地域生活に向けた就労先や住居の検討

2 生活費を請求するための弁護士の紹介

3 精神的安定を目的にした相談面接

4 学校や行政との関係者会議の開催

5 夫が訪ねてきた場合の安全体制の確保

問題34

次の記述のうち、ケース会議で共有する支援の方向性として、適切なものを1つ選びなさい。

1 責められた職員のKさんへの態度を指摘し、自己覚知させる。

2 トラウマの影響について学び直し、Kさんへの理解を深める。

3 Kさんの苦情について、画一化した対応マニュアルを作る。

4 施設生活にはなじめないので、他の住まいを検討する。

5 境界性パーソナリティ障害と考え、精神科診療所への受診につなげる。

問題35

次のうち、この時点でA相談員がLさんに紹介した事業・活動として、適切なものを1つ選びなさい。

1 DV加害者プログラム

2 リラクゼーション法

3 夫婦同席カウンセリング

4 イモーションズ・アノニマス(EA)

5 親支援プログラム

精神保健福祉の理論と相談援助の展開

問題36

Bさん(30歳、女性、統合失調症)は、週に4日、配送センターで仕分業務に従事して3年目となる。利用する障害者就業・生活支援センターのC就労支援担当者(精神保健福祉士)を訪れ、「配送センターの所長に、繁忙期は勤務日数を増やし、1日8時間勤務できないと雇用継続は難しいと言われた。これ以上働くと体調が不安で、通院する時間もなくなる。仕事は辞めたくない。でも、怖くて何も言えなかった」と訴えた。そこで、C就労支援担当者はBさんとの合意を得て、配送センターを訪問して所長に話をした。

次のうち、この場面でC就労支援担当者が果たした役割として、正しいものを1つ選びなさい。

1 インフォームドコンセント

2 アドボカシー

3 リスクマネジメント

4 セカンドオピニオン

5 アカウンタビリティ

問題37

次の記述のうち、精神科リハビリテーションにおけるアプローチの説明として、正しいものを1つ選びなさい。

1 IMR(Illness Management and Recovery)は、支援者が症状を管理する。

2 IPS(Individual Placement and Support)は、本人の希望に基づいて、雇用を目標に支援する。

3 家族心理教育は、家族病理に焦点を当てて治療を行う。

4 包括型地域生活支援プログラム(ACT)は、グループワークを通して回復を目指す。

5 ピアサポートは、経験的知識よりも精神保健福祉の専門的知識を用いる。

問題38

次の記述のうち、精神科専門療法に関する説明として、適切なものを1つ選びなさい。

1 急性期の入院患者に対する作業療法は、生活管理技能の改善を主目的とする。

2 社会生活技能訓練(SST)の基本訓練モデルは、あらかじめ獲得すべき技能が設定されている。

3 アルコール専門外来で行う集団精神療法は、各回の自由参加を原則とする。

4 うつ病に対する認知行動療法は、捉え方の偏りを修正して問題解決を促す。

5 統合失調症に対する心理教育は、精神分析療法を用いて展開する。

問題39

次の記述のうち、精神保健福祉士が連携する職種の役割として、適切なものを1つ選びなさい。

1 公認心理師は、不安や抑うつを訴える患者のストレス反応の評価を行う。

2 薬剤師は、不安で眠れない患者への、睡眠導入剤の処方を行う。

3 作業療法士は、食事摂取カロリーが気になる患者に、献立の作成を行う。

4 介護支援専門員は、転倒を繰り返す患者に、歩行機能の訓練を行う。

5 医師は、障害福祉サービスの利用を希望する患者への、申請書の作成を行う。

問題40

次の記述のうち、相談援助過程におけるインターベンションの説明として、適切なものを1つ選びなさい。

1 相談援助過程を振り返り、契約の終了に向けて準備する。

2 援助計画の進捗状況と達成状況を評価する。

3 個々のニーズの充足に向けて援助者や援助機関が各々の役割を遂行する。

4 課題分析で明らかになったニーズを充足する社会資源を選定する。

5 クライエントのニーズや環境に関する情報を包括的・総合的に精査する。

問題41

U精神科デイケアを利用するDさんは、デイケア担当のE精神保健福祉士に相談した。「先日、隣家の玄関前に空き缶が落ちていました。その横を通り過ぎたところ、いきなり隣人から、『空き缶を捨てたのはお前か』と怒鳴られました。その時は、『違います、私じゃないです』と答えましたが、精神障害者だからそう思われたのですかね。誤解なのに」と唇を噛(か)みしめながら訴えた。E精神保健福祉士は、「Dさんが捨てた物ではないのに、誤解されて、悔しかったですね」と話したところ、Dさんは小さくうなずいた。

次のうち、この場面でE精神保健福祉士が用いた面接技法として、正しいものを1つ選びなさい。

1 励まし

2 要約

3 言い換え

4 繰り返し

5 感情の反映

問題42

次の記述のうち、発達障害のある学生に対して、キャンパスソーシャルワーカー(精神保健福祉士)が行う支援として、適切なものを1つ選びなさい。

1 履修登録の仕組みの理解が難しい場合、本人の代わりに履修登録をする。

2 計画的な課題提出が難しい場合、提出期限を変更するよう教員に依頼する。

3 書字障害がある場合、書き取りの練習を繰り返すように助言する。

4 授業中に照明がまぶしいと感じる場合、サングラスを使用できるように大学と調整する。

5 教員からの質問の意味が分からない場合、自分なりに解釈してよいと伝える。

問題43

V地域活動支援センターのF精神保健福祉士は、一人暮らしをしている利用者を対象としてグループワークを始めることとした。F精神保健福祉士は、開始に当たり、参加するメンバーと個別に面接を行った。最近通い始めたGさんは、「まだ、みんなになじめていないので緊張します」と話した。F精神保健福祉士は、Gさんがグループに対して期待することや不安に感じることを聞くとともに、一人暮らしの様子を聞きながら、Gさんの考えや性格傾向についても把握を試みた。

次のうち、この時点でF精神保健福祉士が活用した援助技術として、適切なものを1つ選びなさい。

1 アイスブレイク

2 集団規範の形成

3 感情転移の活用

4 個人体験の分かち合い

5 波長合わせ

問題44

次の記述のうち、相談援助活動におけるコンサルテーションに関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。

1 コンサルテーションは、コンサルティの専門性に関する支援の振り返りを促すことである。

2 コンサルタントは、助言した結果に責任を負う。

3 コンサルティは、取り上げる問題に応じてコンサルタントを選定する。

4 コンサルタントは、監督・指導する管理的機能を持つ。

5 コンサルティは、受けた助言を採用する際に、コンサルタントの許可を得る。

問題45

次のうち、相談援助機関に配置される職員として、正しいものを1つ選びなさい。

1 児童相談所の精神保健福祉相談員

2 就労移行支援事業所の相談支援専門員

3 地域活動支援センターⅠ型の精神保健福祉士

4 ひきこもり地域支援センターの児童福祉司

5 障害者就業・生活支援センターの障害者職業カウンセラー

問題46

次の記述のうち、精神障害がある者のリカバリーについての説明として、適切なものを1つ選びなさい。

1 全ての人が同じリカバリーの過程を経る。

2 本人が自由に挑戦できるよう、支援者が責任を負う。

3 本人の障害の部分に焦点を当てる。

4 希望はリカバリーを支える原動力となる。

5 身体的状況を切り離し、精神的な回復を図る。

問題47

次の記述のうち、精神障害者のケアマネジメントにおけるリハビリテーション型モデルの説明として、正しいものを1つ選びなさい。

1 利用者に社会資源をあっせんし、双方を結びつける機能を中心とする。

2 多職種による訪問支援チームが、24時間対応をする。

3 利用者との個別の治療関係に基づき、心理的アプローチを重視する。

4 環境調整を行いながら、能力障害に焦点を当て、生活技能の獲得を支援する。

5 利用者とその環境の潜在能力を引き出し、セルフケア能力を高める。

問題48

グループホームを運営しているH精神保健福祉士のところへ、近所でアパート経営をしているJさんが相談に来た。内容は、アパートの空き家対策としてのグループホームへの転用と、それによる利用者と地域住民とのトラブルの心配についてであった。H精神保健福祉士はJさんとの話から、不動産関係者が精神障害者について理解すれば、空き家をグループホームとして活用でき、精神障害者が地域住民の一員として溶け込んで、コミュニティケアが進むのではないかと考えた。そこでH精神保健福祉士は、自身の参加している支援協議会でアパート経営者や不動産関係者向けの精神障害者支援セミナーの開催を提案した。

次のうち、H精神保健福祉士が提案する際に意図した精神障害者支援の理念として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ソーシャルインクルージョン

2 ソーシャルロール・バロリゼーション

3 ソーシャルジャスティス

4 ソーシャルイクオリティ

5 ソーシャル・コンストラクショニズム

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題1)

次の事例を読んで、問題49から問題51までについて答えなさい。

〔事 例〕

P市に住むKさん(30歳、女性)は、学生時代に通院していた精神科病院をL君(5歳、男児)と共に受診した。診察に際してM精神保健福祉士がインテーク面接を行った。Kさんは、「5年前に結婚し、すぐにLを出産したが、2年半前に離婚した。働きながらLを育ててきたが、3か月程前から不眠が続き、仕事に行けなくなり、先月、突然解雇を言い渡された。もう生きていてもしょうがない」とうつろな表情で話した。M精神保健福祉士は、Kさんの来院をねぎらい、傾聴した。同時に、Kさんの手首に巻かれたハンカチから血がにじんでいることや、L君は5歳児にしては小さく痩せていること、不衛生な身なりで表情が乏しいことが気になった。(問題49)

診察の結果、Kさんには自傷行為が認められ、希死念慮が強く、入院治療が必要と判断された。当初Kさんは、「身寄りもなく、Lを残して入院できないしお金もない」と入院に同意しなかった。しかし、主治医より入院の必要性について説明され、M精神保健福祉士がL君への支援と、経済的な支援について説明すると、ほっとした表情を浮かべ入院に同意した。Kさんの入院と同時に、L君は一時保護となった。

入院後、KさんはM精神保健福祉士との面談で、「酒飲みの父親は私に頻繁に暴力を振るったが、母親は助けてくれなかった」「離婚した夫も、酒を飲むと私とLに暴力を振るった」「離婚後、Lを厳しく叱り、世話をできないことが続いた。気付くとリストカットを繰り返していた」と語った。M精神保健福祉士は、誰にも相談できずに苦しんできたKさんに寄り添い、傾聴した。(問題50)

一時保護所のA児童福祉司(精神保健福祉士)は、L君が声かけにほとんど反応せず、言語発達の遅れがみられるため、P市と連携してL君の養育環境の整備を開始した。M精神保健福祉士は、Kさん及び主治医、A児童福祉司と共にKさんの退院後の生活について話し合う場を設けた。A児童福祉司が、母親と暮らすことを希望するL君の意向を伝えると、Kさんは、「退院してLと一緒に暮らしたいが自信がない」と語った。(問題51)

問題49

次の記述のうち、この時点で、必要な情報を収集するために、M精神保健福祉士が行う質問の内容として、適切なものを2つ選びなさい。

1 Kさんへ 「L君がいるのになぜ離婚したのですか」

2 L君へ 「何をしているときが楽しいですか」

3 Kさんへ 「怪我をしているようですが、どうしましたか」

4 L君へ 「片足でケンケンできますか」

5 Kさんへ 「L君を毎日お風呂に入れていますか」

問題50

次の記述のうち、この時点で、M精神保健福祉士がKさんにかけた言葉として、適切なものを1つ選びなさい。

1 「過去に受けた暴力は、時間の経過とともに解決されます」

2 「あなたのどんな行動が、離婚した夫をそんなに怒らせたのでしょうか」

3 「そういうことはよくあることなので、あまり気にしない方がいいですよ」

4 「今の状況をあなたが変えようと思わなければ、私は何もできないのです」

5 「自分を傷つけたくなるほどつらかったのですね。今回のように話ができるといいですね」

問題51

次の記述のうち、この話合いの場で提案されたKさん及びL君への支援の方針として、適切なものを1つ選びなさい。

1 L君の発達支援のために、居宅訪問型児童発達支援を利用する。

2 L君の安全確保のために、里親制度を活用する。

3 Kさん親子の経済的安定のために、就職活動を開始する。

4 Kさん親子をいつでも支援できるように、関係機関との連携体制を構築する。

5 Kさんが過去の体験に向き合えるように、入院治療の継続を調整する。

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題2)

次の事例を読んで、問題52から問題54までについて答えなさい。

〔事 例〕

B精神保健福祉士は、社員のメンタルヘルス対策の強化に伴い、大手製造メーカーの健康相談室に新たに採用された。ある日、健康相談室に製造管理課のC課長が欠勤が続く部下のことで相談に訪れた。C課長の話は、「部下のDさんは、責任感が強いため、多くの仕事を引き受けていた。無理をさせてしまった。Dさんに電話すると、『気持ちが落ち込み、眠れない。出勤できない自分が不甲斐(ふがい)ない』と自分を責めており、対応に困っている」とのことだった。B精神保健福祉士はC課長が心配している気持ちを聞き、Dさんへの対応について助言した。(問題52)

その後、C課長は、「Dさんは仕事を休んでいるものの、体調は落ち着いてきたようだ」とB精神保健福祉士に報告した。また、C課長は、「実は、他にも心配な部下が何人かいる」「部下たちは仕事の負担が多くても、無理して頑張っているように思う」「取引先の納期の意向に沿えないことで営業課に批判され、部下たちの努力が社内で評価されていないのが悔しい」と語った。B精神保健福祉士は、この状況を人事担当者に伝え、ストレスチェックの集団分析の結果、製造管理課は総合健康リスクが高いことを確認した。同課は高ストレスの傾向にあり、仕事の量的負担が高く、互いを気遣っているものの同僚からの支援は受けにくい傾向であることが分かった。そして、人事担当者から高ストレスの要因となる職場環境の改善について取り組むよう依頼を受けた。B精神保健福祉士は、人事担当者やC課長と検討し、改善に向けた具体策に取り組んだ。(問題53)

B精神保健福祉士は、取り組む中で、製造管理課の社員の多くは良い製品を作ることを考え、妥協を許さない仕事ぶりが顕著であると感じた。そして、B精神保健福祉士は、今の問題を解決するための一助として、職場環境の改善に加えて、社員一人ひとりがよりよい対処法を身に付けるための基礎的な研修が必要と考え、人事担当者とC課長の了承を得て、業務内で製造管理課の社員が参加できるように研修企画を進めた。(問題54)

問題52

次の記述のうち、この時点での、B精神保健福祉士のC課長に対する助言として、適切なものを1つ選びなさい。

1 「半日から出社することを伝えてみませんか」

2 「別の部署に移ることを提案してみてはどうですか」

3 「経済的な心配があれば、障害年金の手続を伝えてはどうですか」

4 「産業医への相談を勧めてみませんか」

5 「健康診断を受けるように勧めてはどうですか」

問題53

次の記述のうち、B精神保健福祉士が取り組んだこととして、適切なものを2つ選びなさい。

1 取引先の意向に沿えなかった理由を社内に公表する。

2 C課長に高ストレスの要因を改善する計画の作成を一任する。

3 製造管理課の業務量を可視化し、課内で共有する。

4 休日に製造管理課の社員全員が集まる親睦会を開催する。

5 同僚に対する気遣いを言葉にして伝え合う場を設ける。

問題54

次のうち、B精神保健福祉士が企画した研修の内容として、適切なものを1つ選びなさい。

1 労働時間と疲労度のセルフチェック

2 社員のメンタルヘルス不調の三次予防

3 職場におけるハラスメントの理解

4 自分の要求を抑えて、職場環境に適応するよりよい対処方法

5 精神疾患のある社員への合理的配慮の具体例

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題3)

次の事例を読んで、問題55から問題57までについて答えなさい。

〔事 例〕

Eさん(33歳、女性)は、大学卒業後に仕事をしていた27歳の時に統合失調症と診断された。一時は入院していたが、現在は通院を続けながら一日中自宅で過ごしている。Eさんは今後の生活が心配になり、主治医に話したところ、精神科デイケアの利用を勧められた。

デイケア担当のF精神保健福祉士による初回面談で、Eさんは、「一日中家にいて、いろいろ考えて不安に押しつぶされる感じがする。家族から仕事はどうするのかと聞かれると、焦りが強くなる。今の生活を変えたいけれど、新しい場所でうまくやれるか、不安が先に立つ。まずは生活リズムを整えたい。将来的には仕事も考えたい」と話した。F精神保健福祉士はEさんの気持ちを受け止め、週1日のデイケアを複数回体験することを提案した。(問題55)

体験後にEさんは、「同世代の人がいて、自分と同じように悩んでいる人もいる。今後も継続して利用したい」と話し、週3日のデイケア利用を開始した。

1か月が過ぎた頃、EさんからF精神保健福祉士に、「デイケアに通い始めて、規則正しい生活にはなった。でも、多くのメンバーと話して仲良くなりたい、次のステップにつなげたいと頑張れば頑張るほど、うまくいかなくて焦りが強くなる。疲れてるのかな。どうしたら自然にできるんだろう」と相談があった。相談を受け、F精神保健福祉士はEさんの援助方針を検討するスタッフ会議を開催した。(問題56)

利用から半年が過ぎ、グループ活動の企画に取り組むなど、生き生きとした姿が少しずつ見られるようになった。F精神保健福祉士はモニタリング面談で、「これまでの活動を振り返り、感じていることを教えてください」と尋ねた。Eさんは、「メンバー同士で支え、支えられることで、新しい自分が生まれてきた感じ。少しずつ希望が見えてきた。これからも迷ったり、悩んだりすると思うけど、今はちょっとだけ前向きになれた自分を褒めてあげたい」と話してくれた。(問題57)

問題55

次の記述のうち、この時点でF精神保健福祉士が行うこととして、適切なものを1つ選びなさい。

1 Eさんの支援計画を立案する。

2 外来担当の看護師からEさんの受診や生活の情報を得る。

3 就労経験のあるデイケア利用者からEさんへ就職活動体験談を話してもらう。

4 Eさんの住む地域を担当する民生委員からEさんの情報を得る。

5 就労移行支援のためのチェックリストを用いて、Eさんの作業能力を評価する。

問題56

次の記述のうち、このスタッフ会議でF精神保健福祉士が提案したこととして、適切なものを1つ選びなさい。

1 「Eさんと家族が希望している就労プログラムを勧めてみましょう」

2 「これまでどおり生活リズム改善を主目標にすすめましょう」

3 「レクリエーションの司会進行をお願いしてみましょう」

4 「疲労は再発につながるので、デイケアを休むことを助言しましょう」

5 「Eさんに声かけして見守りつつ、少人数活動への参加を促してみましょう」

問題57

次のうち、F精神保健福祉士が、Eさんの語りから評価した内容として、適切なものを1つ選びなさい。

1 生活技術の獲得

2 疾病や障害に対する正しい知識の獲得

3 役割モデルの獲得

4 自己効力感や自己有用感の向上

5 社会改革に向けた意識の醸成

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題4)

次の事例を読んで、問題58から問題60までについて答えなさい。

〔事 例〕

Gさん(50歳、男性)は、両親と農業を営んでいた28歳の時に統合失調症を発症した。通院や服薬が不規則になることがきっかけで病状が悪化し、数回の入退院を繰り返している。今回の入院が3年と長くなったのは、病状が安定するまでに時間を要したり、父親にがんが見つかって、母親がその看病や介護に追われたことも重なったからである。

H精神保健福祉士は、Gさんが入院している病棟に異動してきたばかりであり、前任者から、「自宅では母親が一人で暮らしている」と申し送りを受けた。そこで、H精神保健福祉士は母親からGさんの今後についての考えを聞くことにし、面会に来院した際に面談した。母親は、「今まではGの病気が悪くなると、夫が何とかその場を収めて病院に連れて行っていた。でも今、夫は他界し、遠方にいるGの弟は疎遠なので頼れない。もし家でGの病気が悪くなったら、私だけでは不安がある。でも、今は病状が落ち着いているし、Gが希望すれば家に帰ってきてよいとも思っている」と話した。そこで、H精神保健福祉士はGさんと面接したが、Gさんは、「退院したくない、ここにいる」と素っ気なく発言して視線を外した。(問題58)

その2か月後、H精神保健福祉士は、病棟スタッフと退院支援活動を行うこととし、Gさんや入院患者数名に声をかけ、週に一度退院に向けて活動するグループを作った。グループ活動を開始して1か月後、H精神保健福祉士は、入院経験があり、地域活動支援センターを利用しているJさんにゲストとして参加してもらった。(問題59) その後、Gさんの退院が決まり、H精神保健福祉士は母親と面談した。母親は、「Gが家に帰ってきても、食事の支度や洗濯などは何とかなる。でも、Gが自分できちんと薬を飲み、再発せずに規則正しく生活を送れるかどうかが不安。何か手助けしてくれるものはないだろうか」と話した。(問題60)

問題58

次の記述のうち、この時点で、H精神保健福祉士が行う支援として、適切なものを1つ選びなさい。

1 主治医にGさんの入院継続の希望を代弁する。

2 Gさんとの面接回数を増やす。

3 プライバシーを尊重し、病棟のスタッフにはGさんとの話の内容を秘密にする。

4 Gさんと母親に、一緒に家族会に参加するよう促す。

5 Gさんの弟に退院を勧めるよう手紙を送る。

問題59

次の記述のうち、この時点で、H精神保健福祉士がJさんに期待した役割として、適切なものを1つ選びなさい。

1 退院後の生活が想像できるような話をしてもらう。

2 病院で依存的な生活を続けないよう助言してもらう。

3 利用できる障害福祉サービスの手続について説明してもらう。

4 家族と経済的援助の約束を交わすよう促してもらう。

5 銀行のキャッシュカードの使い方を教えてもらう。

問題60

次のうち、この時点において、H精神保健福祉士がGさんの母親に紹介した制度として、適切なものを1つ選びなさい。

1 居宅介護

2 精神科訪問看護

3 行動援護

4 日常生活自立支援事業

5 障害支援区分の認定調査

精神保健福祉に関する制度とサービス

問題61

精神医療審査会に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。

1 医療保護入院者は審査の対象外である。

2 精神科病院の管理者に入院中の者の退院を命じることができる。

3 委員には精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者が含まれる。

4 委員の任期は5年である。

5 入院中の者の電話での退院請求を審査することができる。

問題62

次のうち、障害者基本法に規定されている事項として、正しいものを1つ選びなさい。

1 都道府県障害者計画に関する合議制の機関の設置

2 障害福祉計画の策定

3 高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業の展開

4 都道府県障害者権利擁護センターの業務

5 難病相談支援センターの設置

問題63

次の記述のうち、「障害者総合支援法」における自立支援医療(精神通院医療)の説明として、正しいものを1つ選びなさい。

1 月の負担上限額を超えない場合の自己負担は、原則2割である。

2 受給者証の有効期間は、原則2年間である。

3 精神通院医療の要否に関する判定を行うのは、居住地の市町村である。

4 所得にかかわらず自己負担の上限は、一律である。

5 支給認定の申請書は、市町村に提出する。

(注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

問題64

次の記述のうち、健康保険法における入院時生活療養費の説明として、正しいものを1つ選びなさい。

1 特定長期入院被保険者が対象である。

2 一般病床に入院中の者が対象である。

3 食費と居住費の全額が給付される。

4 入院するための移送費が含まれる。

5 高額療養費の算定の対象である。

問題65

Kさん(42歳)は、17歳の時に統合失調症と診断された。その後、現在まで精神科診療所への通院を続けている。大学を卒業後に初めて就職をしたものの、体調を崩し仕事は長続きしなかった。その後も、何度か就職するも病状が悪化して半年も経たずに退職することを繰り返していた。Kさんは直近の2年間は働いておらず、親亡き後の生活における経済的不安を抱えるようになった。そのことを知った通院する精神科診療所の精神保健福祉士は、Kさんが受給できる可能性のある障害者に対する経済的な支援制度の申請を提案した。

次のうち、精神保健福祉士がKさんに申請を提案したものとして、適切なものを1つ選びなさい。

1 障害基礎年金

2 障害厚生年金

3 障害手当金

4 特別障害者手当

5 特別障害給付金

問題66

次のうち、仮釈放の許否決定の権限を有する機関として、正しいものを1つ選びなさい。

1 地方裁判所

2 地方検察庁

3 保護観察所

4 地方更生保護委員会

5 刑務所

問題67

「医療観察法」における地域処遇に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 地方裁判所は、6か月ごとに通院処遇の継続の確認を行う。

2 指定通院医療機関は、対象者自身で決めることができる。

3 担当の精神保健参与員は、日常生活における相談に応じる。

4 指定通院医療機関での通院医療費は、「障害者総合支援法」における自立支援医療の対象となる。

5 対象者本人は、原則として保護観察所が主催するケア会議に出席して意見を述べることができる。

(注)1 「医療観察法」とは、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。

2 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

問題68

次の記述のうち、「医療観察法」における社会復帰調整官に関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。

1 通院による処遇終了が決定された者に対して、生活環境の調査を行う。

2 通院による処遇が決定された者に対して、精神保健観察を行う。

3 当初審判中の者に対して、生活環境の調整を行う。

4 入院による処遇が決定された者に対して、生活環境の調査を行う。

5 入院による処遇が決定された者に対して、精神保健観察を行う。

(注) 「医療観察法」とは、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。

問題69

次のうち、社会調査における無作為化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)に関する記述として、正しいものを1つ選びなさい。

1 質的調査として実施される。

2 対象者の無作為抽出が前提条件である。

3 対象者が二つの群に無作為に割り付けられる。

4 一つの群の繰り返し測定を行う調査法である。

5 理論的サンプリングが行われる。

(精神保健福祉に関する制度とサービス・事例問題)

次の事例を読んで、>問題70から問題72までについて答えなさい

〔事 例〕

Lさん(39歳、女性)は、統合失調症の患者である。身寄りのないLさんは、働きながら一人暮らしをしていたが、仕事上のストレスから32歳で発症し、精神科病院へ入院となった。6か月の入院治療の結果、陽性症状は落ち着き、一人暮らしを再開することになった。

ある日、通院する精神科病院のM精神保健福祉士は、「頑張ってはいるけれど、毎日の家事がとても大変です」とLさんから相談を受けた。話を聞くと、陰性症状としての意欲の低下が著しく、身の回りのケアに困難がある様子がうかがえた。生活状況の確認のためLさんの部屋を訪れると、室内はひどく散らかっており、食事内容も偏っているようであった。M精神保健福祉士は、W指定特定相談支援事業者を紹介し、Lさんは「障害者総合支援法」におけるホームヘルパーによる調理や洗濯・掃除など家事の援助・相談が受けられる制度を利用し始めた。(問題70)

しばらく安定した生活をしていたLさんであったが、38歳の時、通院している病院の定期的な血液検査の結果、糖尿病が進行していることが明らかになった。これ以上の悪化を予防するため健康管理の必要性を感じたM精神保健福祉士は、Lさんと相談の上、主治医の指示を受けた訪問看護ステーションの看護師が自宅に訪問するサービスの利用を支援した。(問題71)

ホームヘルパーと看護師による訪問を受けるようになったLさんであったが、次第に戸惑いの表情を見せるようになった。心配したM精神保健福祉士が話を聞くと、「私はできれば働きたい。でも訪問してくれる人や主治医は、口々に違うことを言う。私はどうしたらいいのか分からなくなってきた」とLさんは訴えた。本人の意向に基づく支援内容の検討の必要性を感じたM精神保健福祉士は、その状況をW指定特定相談支援事業者に報告した。そこでW指定特定相談支援事業者は、支援方針を調整するため本人を含めた関係者が参加するケア会議を開催した。(問題72)

(注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

問題70

次の記述のうち、Lさんが利用し始めた制度の説明として、正しいものを1つ選びなさい。

1 訓練等給付に位置づけられる。

2 利用に当たり障害支援区分の判定は不要である。

3 サービスの利用者負担は、所得によらず一律である。

4 給付費は国が原則として2分の1を負担する。

5 国の裁量的経費に位置づけられる。

問題71

次のうち、Lさんに提供されるサービスの根拠となるものとして、正しいものを1つ選びなさい。

1 介護保険制度

2 地域生活支援事業

3 医療保険制度

4 無料低額診療事業

5 地域相談支援

問題72

次のうち、この時の活動に対してW指定特定相談支援事業者に支給されるものとして、適切なものを1つ選びなさい。

1 生活扶助費

2 計画相談支援給付費

3 介護給付費

4 訓練等給付費

5 市町村特別給付

精神障害者の生活支援システム

問題73

次のうち、「障害者総合支援法」に基づくサービスに関する記述として、正しいものを1つ選びなさい。

1 共同生活援助(グループホーム)は、介護給付に位置づけられている。

2 福祉ホームは、自立支援給付に位置づけられている。

3 住宅入居等支援事業(居住サポート事業)の実施主体は、都道府県である。

4 行動援護は、外出時において視覚障害のある障害者に同行し、移動の援護を行う。

5 自立訓練(生活訓練)の申請には、サービス等利用計画案の提出が求められる。

(注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

問題74

次のうち、精神障害者の就労を支援する機関に配置が規定されている職名として、適切なものを1つ選びなさい。

1 公共職業安定所(ハローワーク)の精神障害者雇用トータルサポーター

2 就労継続支援A型事業所の障害者職業カウンセラー

3 地域活動支援センターのサービス管理責任者

4 地域障害者職業センターの就労支援員

5 ジョブカフェの職業指導員

問題75

次の記述のうち、諸外国における精神保健福祉に関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。

1 アメリカでは、精神科病院の新設を禁止する法律第180号が制定された。

2 イタリアでは、「ついに闇からの脱出」が政府から発表された。

3 ニュージーランドでの当事者活動がクラブハウスモデルの起源である。

4 オーストラリアが起源となって、アンチスティグマプログラムとして「Open the Door」が発案された。

5 韓国では、精神保健福祉に関わる専門職として、精神健康専門要員が位置づけられている。

問題76

指定特定相談支援事業者に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村が事業者を指定する。

2 生活が一時的に困難となった者を対象とした入所施設の運営を行う。

3 生活福祉資金の貸付けを行う。

4 地域定着支援を行う。

5 居宅サービス計画の作成を行う。

問題77

行政機関における精神保健福祉業務に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。

1 保健所は、成年後見制度利用支援事業の利用申請の窓口業務を担う。

2 保健所は、救護施設への入所措置に関する業務を担う。

3 保健所は、市町村が実施する精神障害者に対する施策の技術的な支援を行う。

4 精神保健福祉センターは、地域活動支援センター機能強化事業を実施する。

5 精神保健福祉センターは、精神障害者保健福祉手帳の申請の受理を行う。

(精神障害者の生活支援システム・事例問題)

次の事例を読んで、問題78から問題80までについて答えなさい。

〔事 例〕

Aさん(30歳、男性)は、21歳の時に統合失調症と診断され、母親と二人で住む市内にあるX精神科病院に入院した。しばらくして症状はようやく落ち着いたが、母親は自宅への退院に難色を示し、他の退院後の受入先も確保できず退院の話は進まなかった。そのうちAさんの退院意欲が減退したこともあり、入院は長期化した。

Aさんは28歳の時、地域で生活する精神障害当事者と対話できるX精神科病院内のプログラムに参加した。そこでAさんは退院意欲が喚起され、病院のB精神保健福祉士に、「退院して自宅に戻りたい」と相談を持ちかけた。B精神保健福祉士は、Aさんとの面接に加えて母親との面接を設定した。面接で母親は、「病気のことがよく分からないし、また入院前の、あの大変な状況に戻っても対応できる自信がない」と語り、自宅への退院に後ろ向きであった。B精神保健福祉士は、家族を対象に専門家が実施するX精神科病院内の家族の感情表出に着目したプログラムへの参加を勧めた。(問題78)

プログラムへの参加を通して、母親はAさんの自宅への退院に前向きになり、様々な人の支援を受けながらAさんは自宅へ退院した。しかし退院後間もなく、母親は体調を崩して1週間ほど入院となり、自宅でAさんの身の回りの世話をできる人がいなくなった。Aさんは生活能力の低下もあいまって心細さを強く訴えるようになったため、「障害者総合支援法」に規定される、短期間の入所により食事や入浴の提供などを行うサービスを利用することとした。(問題79)

母親の退院後しばらくして、Aさんは自宅に戻った。B精神保健福祉士の勧めでY地域活動支援センターに通い、徐々に地域での生活を楽しむようになった。Y地域活動支援センターでは、米国で精神障害当事者が開発したリカバリーに向けたプログラムが行われていた。入院中に知り合ったCさんに誘われてAさんもそのプログラムに参加した。そこで、自分のこれからの人生を考えられるようになった。(問題80)

(注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

問題78

次のうち、Aさんの母親が参加したプログラムとして、適切なものを1つ選びなさい。

1 心理教育

2 社会生活技能訓練(SST)

3 包括型地域生活支援プログラム(ACT)

4 ピアカウンセリング

5 森田療法

問題79

次の記述のうち、Aさんが利用したサービスの説明として、正しいものを1つ選びなさい。

1 利用者の外出時における移動中の介護を行う。

2 保健所が利用申請の窓口である。

3 夜間もサービスを提供する。

4 訓練等給付に基づくサービスである。

5 定期的な巡回訪問を実施する。

問題80

Aさんが参加したプログラムに関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

1 「私たちは一人ぼっちではない(We are not alone)」を合言葉とした。

2 精神障害当事者が中心となって実施する。

3 支援者と共同で創出した働く場が起源である。

4 困難な時の対処方法について、プランをあらかじめ作成する。

5 匿名での参加が原則である。

人体の構造と機能及び疾病

問題1

加齢に伴う身体の変化に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 肺の残気量が増加する。

2 拡張期血圧が低下する。

3 聴力は低音域から低下する。

4 下部食道括約筋の収縮力が増強する。

5 膀胱(ぼうこう)容量が増大する。

問題2

事例を読んで、国際生活機能分類(ICF)のモデルに基づく記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

Aさん(40歳)は、脳性麻痺(まひ)のため、歩行訓練をしながら外出時は杖(つえ)を使用していた。しかし麻痺が進行し、電動車いすを使用するようになり、電車での通勤が困難となった。その後、駅の階段に車いす用の昇降機が設置され、電車での通勤が可能となった。

1 疾患としての脳性麻痺は、「個人因子」に分類される。

2 電動車いす使用は、「心身機能・身体構造」に分類される。

3 杖歩行が困難となった状態は、「活動制限」と表現される。

4 電車通勤が困難となった状態は、「能力障害」と表現される。

5 歩行訓練は、「環境因子」に分類される。

問題3

感染症に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 ノロウイルスの潜伏期間はおよそ14日である。

2 インフルエンザは肺炎を合併することがある。

3 肺炎はレジオネラ菌によるものが最も多い。

4 疥癬(かいせん)の原因はノミである。

5 肺結核の主な感染経路は飛沫(ひまつ)感染である。

問題4

骨・関節疾患及び骨折に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は女性より男性に多い。

2 関節リウマチでみられる手指のこわばりは夕方に多い。

3 腰部脊柱管狭窄症(きょうさくしょう)は若年者に多い疾患である。

4 大腿骨(だいたいこつ)近位部骨折は保存治療が優先される。

5 変形性関節症の中で最も多いのは、変形性膝関節症である。

問題5

次のうち、双極性障害の躁(そう)状態に特徴的な症状として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 体感幻覚

2 作為体験

3 日内変動

4 誇大妄想

5 思考途絶

問題6

次のうち、精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)において、物質関連障害及び嗜癖性(しへきせい)障害群に分類されるものとして、正しいものを1つ選びなさい。

1 限局性学習症(限局性学習障害)

2 ギャンブル障害

3 神経性やせ症(神経性無食欲症)

4 強迫症(強迫性障害)

5 急性ストレス障害

問題7

リハビリテーションに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 リハビリテーションに関わる専門職に管理栄養士は含まれないとされている。

2 嚥下(えんげ)障害のリハビリテーションは視能訓練士が行う。

3 障害者の就労支援はリハビリテーションに含まれないとされている。

4 フレイルはリハビリテーションの対象に含まれる。

5 先天性の障害はリハビリテーションの対象に含まれないとされている。

心理学理論と心理的支援

問題8

次の記述のうち、レスポンデント(古典的)条件づけの事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 デイサービスの体験利用をしたら思ったよりも楽しかったので、継続的に利用するようになった。

2 自動車を運転しているときに事故に遭ってから、自動車に乗ろうとすると不安な気持ちを強く感じるようになった。

3 試験前に時間をかけて勉強することで高得点が取れたので、次の試験前にも勉強に時間をかけるようになった。

4 おもちゃを乱暴に扱っていた子どもに注意をしたら、優しく扱うようになった。

5 工事が始まって大きな音に驚いたが、しばらく経つうちに慣れて気にならなくなった。

問題9

記憶に関する次の記述のうち、展望的記憶の事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 日本で一番大きな湖は琵琶湖(びわこ)だと知っていた。

2 以前行ったことがあるケーキ屋の場所を、思い出すことができた。

3 子どもの頃に鉄棒から落ちてケガしたことを、思い出した。

4 10年ぶりに自転車に乗ったが、うまく乗ることができた。

5 友人と遊園地に行く約束をしていたので、朝から出掛けた。

問題10

ピアジェ(Piaget, J.)の発達理論に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 感覚運動期には、「ごっこ遊び」のようなシンボル機能が生じる。

2 前操作期には、元に戻せば最初の状態になることが理解され、可逆的操作が可能になる。

3 前操作期には、自分の行動について、手段と目的の関係が理解できるようになる。

4 具体的操作期には、コップから別の容器に水を移したときに液面の高さが変化しても、量は変わらないことが理解できる。

5 形式的操作期には、思考の自己中心性が強くみられる。

問題11

エリクソン(Erikson, E.)の発達段階説における各発達段階の課題に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 乳児期では、自発性の獲得である。

2 幼児期後期では、信頼感の獲得である。

3 学童期(児童期)では、親密性の獲得である。

4 青年期では、自律感の獲得である。

5 老年期では、統合感の獲得である。

問題12

ストレスに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 汎適応症候群(一般適応症候群)における警告反応期とは、ストレス状況にうまく適応した時期のことである。

2 汎適応症候群(一般適応症候群)における抵抗期とは、外界からの刺激を長期間受け、生体のエネルギーが限界を超えた時期のことである。

3 ホメオスタシスとは、外的内的環境の絶え間ない変化に応じて、生体を一定の安定した状態に保つ働きのことである。

4 タイプA行動パターンには、他者との競争を好まないという特性がある。

5 心理社会的ストレスモデルでは、ある出来事がストレスになり得るかどうかに、個人の認知的評価が影響することはないとされている。

問題13

心理検査に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ウェクスラー児童用知能検査第4版(WISC-Ⅳ)は、対象年齢が2歳から7歳である。

2 ミネソタ多面人格目録(MMPI)では、日常生活の欲求不満場面を投影法により測定する。

3 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は、高齢者の抑うつを測定する。

4 ロールシャッハテストは、図版に対する反応からパーソナリティを理解する投影法検査である。

5 矢田部ギルフォード(YG)性格検査は、連続した単純な作業を繰り返す検査である。

問題14

心理療法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 精神分析療法では、無意識のエス(イド)の活動と、意識の自我(エゴ)の活動とが適切に関連するよう援助する。

2 家族療法は、家族問題を抱える個人を対象とする療法である。

3 遊戯療法(プレイセラピー)は、言語によって自分の考えや感情を十分に表現する方法であり、主として心理劇を用いる。

4 系統的脱感作法は、四肢の重感や温感、心臓調整、呼吸調整、腹部温感、額部涼感を順に得ることで、心身の状態を緊張から弛緩(しかん)へと切り替える。

5 臨床動作法は、「動作」という心理活動を通して、身体の不調を言語化させる療法である。

社会理論と社会システム

問題15

社会階層と社会移動の諸概念に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 純粋移動とは、あらかじめ定められたエリートの基準に見合う者だけが育成され、エリートとしての地位を得ることをいう。

2 構造移動とは、産業構造や人口動態の変化によって社会的地位の移動を余儀なくされることをいう。

3 業績主義とは、本人の努力によって変更することができない要素によって社会的地位が与えられることをいう。

4 属性主義とは、個人の能力や成果に応じて社会的地位が与えられることをいう。

5 世代間移動とは、一個人の一生の間での社会的地位の移動のことをいう。

問題16

「平成27年国勢調査」(総務省)に示された、現在の日本の就業状況に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 15歳以上就業者で従業上の地位が「雇用者」である人々のうち、女性で最も高い割合を占めているのは、「パート・アルバイト・その他」である。

2 15歳以上就業者について、産業大分類別に男女比をみると、女性の割合が最も高いのは、「電気・ガス・熱供給・水道業」である。

3 15歳以上就業者について、産業大分類別に男女比をみると、男性の割合が最も高いのは、「医療、福祉」である。

4 15歳以上外国人就業者について、産業大分類別の内訳をみると、「宿泊業、飲食サービス業」に就業する者の割合が最も高い。

5 男女別労働力率を年齢5歳階級別にみると、35~39歳の女性の労働力率は、90%を超えている。

問題17

次のうち、ベック(Beck, U.)が提唱した、産業社会の発展に伴う環境破壊等によって人々の生活や社会が脅かされ、何らかの対処が迫られている社会を示す概念として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 脱工業化社会

2 情報社会

3 ゲゼルシャフト

4 大衆社会

5 リスク社会

問題18

「平成27年国勢調査」(総務省)並びに「2019年国民生活基礎調査」(厚生労働省)における家族と世帯に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 国勢調査においては、世帯を「一般世帯」と「非親族世帯」の二つに大きく分類している。

2 国民生活基礎調査においては、「核家族世帯」には「三世代世帯」は含まない。

3 国民生活基礎調査においては、2019年(令和元年)現在、「65歳以上の者のいる世帯」の中で、「三世代世帯」の割合は「夫婦のみの世帯」の割合よりも高い。

4 国民生活基礎調査においては、2019年(令和元年)現在、65歳以上の単独世帯に占める割合は「男の単独世帯」の方が「女の単独世帯」よりも高い。

5 国民生活基礎調査においては、2019年(令和元年)現在、全世帯に占める「児童のいる世帯」の割合は「児童のいない世帯」の割合よりも高い。

問題19

社会的行為に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 パーソンズ(Parsons, T.)は、相互行為における無意識的、習慣的な行為に着目し、そうした行為において利用される個人の文化的な蓄積を「文化資本」と呼んだ。

2 ハーバーマス(Habermas, J.)は、個人に外在して個人に強制力を持つ、信念や慣行などの行為・思考の様式、集団で生じる熱狂などの社会的潮流を「社会的事実」と呼び、社会学の固有の領域を定式化した。

3 ブルデュー(Bourdieu, P.)は、相互行為が相手の行為や期待に依存し合って成立していることを「ダブル・コンティンジェンシー」と呼んだ。

4 ヴェーバー(Weber, M.)は、社会的行為を四つに分類し、特定の目的を実現するための手段になっている行為を「目的合理的行為」と呼んだ。

5 デュルケム(Durkheim, E.)は、言語を媒介とした自己と他者の間で相互了解に基づく合意形成を目指す行為を「コミュニケーション的行為」と呼んだ。

問題20

次のうち、自我とは主我(I)と客我(me)の2つの側面から成立しており、他者との関係が自己自身への関係へと転換されることによって形成されることを指摘した人物として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 マートン(Merton, R.K.)

2 テンニース(Tonnies, F.)

3 ミード(Mead, G.)

4 ルーマン(Luhmann, N.)

5 ジンメル(Simmel, G.)

問題21

他者や社会集団によって個人に押し付けられた「好ましくない違いを表わす印(しるし)」に基づいて、それを負う人々に対して様々な差別が行われることをゴッフマン(Goffman, E.)は指摘した。次のうち、この「好ましくない違いを表わす印」を示す概念として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 自己成就的予言

2 マイノリティ

3 スティグマ

4 クレイム申立て

5 カリスマ

現代社会と福祉

問題22

次の記述のうち、1970年代後半の「福祉の見直し」が提唱された時期に示された「新経済社会7カ年計画」の内容として、正しいものを1つ選びなさい。

1 社会保障制度を「すべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすること」と新たに定義した。

2 社会保障を、所得階層の観点から「貧困階層に対する施策」「低所得階層に対する施策」「一般所得階層に対する施策」に区分した。

3 社会福祉施設への需要の増加を踏まえて、5か年程度の期間の社会福祉施設緊急整備計画の樹立とその実施を求めた。

4 個人の自助努力と家庭や近隣・地域社会等との連携を基礎とした「日本型ともいうべき新しい福祉社会の実現を目指す」ことを構想した。

5 要介護高齢者の増加を背景に、介護サービス見込量の集計を踏まえ、訪問介護等の介護サービスの具体的数値目標を定めた。

問題23

ノーマライゼーションに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 EU(欧州連合)の社会的包摂政策がノーマライゼーションの思想形成に影響を与えた。

2 知的障害者の生活を可能な限り通常の生活状態に近づけるようにすることから始まった。

3 ニュルンベルク綱領(1947年)の基本理念として採択されたことで、世界的に浸透した。

4 国際児童年の制定に強い影響を与えた。

5 日本の身体障害者福祉法の制定に強い影響を与えた。

問題24

福祉政策の学説に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ローズ(Rose, R.)は、経済成長、高齢化、官僚制が各国の福祉国家化を促進する要因であるという収斂(しゅうれん)理論を提示した。

2 エスピン-アンデルセン(Esping-Andersen, G.)は、自由主義・保守主義・社会民主主義という3類型からなる福祉レジーム論を提示した。

3 マーシャル(Marshall, T.)は、社会における福祉の総量(TWS)は家庭(H)、市場(M)、国家(S)が担う福祉の合計であるという福祉ミックス論を提示した。

4 ウィレンスキー(Wilensky, H.)は、福祉の給付を「社会福祉」「企業福祉」「財政福祉」に区別した福祉の社会的分業論を提示した。

5 ティトマス(Titmuss, R.)は、市民権が18世紀に市民的権利(公民権)、19世紀に政治的権利(参政権)、20世紀に社会的権利(社会権)という形で確立されてきたという市民権理論を提示した。

問題25

戦前の社会事業に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 方面委員制度は、社会事業の確立によって済世顧問制度へと発展した。

2 第一次世界大戦末期に発生した米騒動の直後に、社会事業に関する事項を扱う行政機関として厚生省が設立された。

3 救護法は市町村を実施主体とする公的扶助義務主義を採用したが、要救護者による保護請求権は認めなかった。

4 国家総動員体制下において、人的資源論に基づく生産力・軍事力の観点から、戦時厚生事業は社会事業へと再編された。

5 社会事業法の成立により、私設社会事業への地方長官(知事)による監督権が撤廃されるとともに、公費助成も打ち切られた。

問題26

イギリスにおける貧困に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 ラウントリー(Rowntree, B.)は、ロンドンで貧困調査を行い、貧困の主たる原因が飲酒や浪費のような個人的習慣にあると指摘した。

2 ベヴァリッジ(Beveridge, W.)による『社会保険および関連サービス』(「ベヴァリッジ報告」)は、「窮乏」(want)に対する社会保障の手段として、公的扶助(国民扶助)が最適であり、社会保険は不要であるとした。

3 エイベル-スミス(Abel-Smith, B.)とタウンゼント(Townsend, P.)は、イギリスの貧困世帯が増加していることを1960年代に指摘し、それが貧困の再発見の契機となった。

4 タウンゼント(Townsend, P.)は、等価可処分所得の中央値の50%を下回る所得しか得ていない者を相対的剥奪の状態にある者とし、イギリスに多数存在すると指摘した。

5 サッチャー(Thatcher, M.)が率いた保守党政権は、貧困や社会的排除への対策として、従来の社会民主主義とも新自由主義とも異なる「第三の道」の考え方に立つ政策を推進した。

問題27

新しい社会的リスクやそれへの対処に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

1 ニートとは、35~59歳の未婚者のうち、仕事をしておらず、ふだんずっと一人でいるか、家族しか一緒にいる人がいない者のことを指す。

2 ダブルケアとは、老老介護の増加を踏まえ、ケアを受ける人と、その人をケアする家族の双方を同時に支援することを指す。

3 保活とは、子どもを認可保育所等に入れるために保護者が行う活動であり、保育所の待機児童が多い地域で活発に行われる傾向がある。

4 8050問題とは、一般的には、80代の高齢の親と、50代の無職やひきこもり状態などにある独身の子が同居し、貧困や社会的孤立などの生活課題を抱えている状況を指す。

5 ワーキングプアとは、福祉給付の打切りを恐れ、就労を見合わせる人々のことを指す。

問題28

人権に関する次の事項のうち、国際条約として個別の条文に規定されるに至っていないものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 性的指向及び性自認に基づく差別の禁止

2 障害者への合理的配慮の提供

3 自己の意見を形成する能力のある児童が自由に自己の意見を表明する権利

4 同一価値労働同一賃金の原則

5 人種的憎悪や人種差別を正当化する扇動や行為を根絶するための措置

問題29

福祉政策と市場の関係などに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 公共サービスの民営化の具体的方策として、サービス供給主体の決定に、官民競争入札及び民間競争入札制度を導入する市場化テストがある。

2 準市場では、行政主導のサービス供給を促進するため、非営利の事業者間での競争を促す一方で、営利事業者の参入を認めないという特徴がある。

3 プライベート・ファイナンス・イニシアティブ(PFI)とは、公有財産を民間に売却し、その利益で政府の財政赤字を補填(ほてん)することである。

4 指定管理者制度とは、民間資金を使って公共施設を整備することである。

5 ニュー・パブリック・マネジメント(NPM)では、政府の再分配機能を強化し、「大きな政府」を実現することが目標とされる。

問題30

人々の生活の豊かさを測定するための諸指標に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 1960年代の日本では、「真の豊かさ」を測定することを目指して開発された「新国民生活指標」を活用する形で、中央省庁で政策評価が開始された。

2 ブータンの国民総幸福量(GNH)は、国内総生産(GDP)を成長させるために必要な、環境保護・文化の推進・良き統治のあり方を提示することを目的としている。

3 「世界幸福度報告(World Happiness Report)」の2021年版では、日本が幸福度ランキングの首位となっている。

4 国連開発計画(UNDP)の「人間開発指数」(HDI)は、セン(Sen, A.)の潜在能力(ケイパビリティ)アプローチを理論的背景の一つとしている。

5 日本の内閣府による「満足度・生活の質を表す指標群(ダッシュボード)」では、「家計や資産」「雇用と賃金」といった経済的指標のウェイトが大きい。

(注) 「世界幸福度報告(World Happiness Report)」とは、国際連合の持続可能な開発ソリューション・ネットワークが刊行した報告書のことである。

問題31

教育政策における経済的支援に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 国は、義務教育の無償の範囲を、授業料のみならず、教科書、教材費、給食費にも及ぶものとしている。

2 国が定める高等学校等就学支援金及び大学等における修学の支援における授業料等減免には、受給に当たっての所得制限はない。

3 国が定める高等学校等就学支援金による支給額は、生徒の通う学校の種類を問わず同額である。

4 日本学生支援機構による大学等の高等教育における奨学金は貸与型であり、給付型のものはない。

5 国が定める就学援助は、経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者を対象とする。

地域福祉の理論と方法

問題32

戦後の民間福祉活動の発展過程に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の「六項目提案」(1949年(昭和24年))で共同募金会の設立が指示されたことにより、共同募金運動が開始された。

2 「社会福祉協議会基本要項」(1962年(昭和37年))により、社会福祉協議会は在宅福祉サービス供給システム構築の、民間の中核として位置づけられた。

3 社会福祉事業法の改正(1983年(昭和58年))により、市町村社会福祉協議会が法制化され、地域福祉におけるその役割が明確になった。

4 特定非営利活動促進法の改正及び税制改正(2001年(平成13年))により、認定された法人に寄附をした者は、税制上の優遇措置を受けられないことになった。

5 社会福祉法の改正(2016年(平成28年))により、行政が実施する事業を代替する取組を行うことが、社会福祉法人の責務として規定された。

問題33

地域福祉の主体に関する、次の社会福祉法の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 地域住民は、相互に人格と個性を尊重し合いながら、個人の自立の助長を目指して活動を行わなければならない。

2 地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者、社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、地域福祉を推進するよう努めなければならない。

3 社会福祉協議会は、社会福祉を目的とする事業の実施のため、福祉サービスの提供体制の確保や適切な利用推進の施策等の必要な措置を講じなければならない。

4 地域住民等は、地域福祉の推進に当たって、経済的課題を把握し、その解決を行う関係機関との連携により、課題の解決を図らなければならない。

5 国及び地方公共団体は、民間企業との有機的な連携を図り、福祉サービスを効率的に提供するように努めなければならない。

問題34

住宅の維持・確保に困難を抱える人への支援のための施策に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 生活困窮者住居確保給付金は、収入が減少した理由のいかんを問わず、住宅の家賃を支払うことが困難になった者に対し、家賃相当額を支給するものである。

2 公営住宅の供給を行う地方公共団体は、公営住宅の入居者に特別の事情がある場合において必要があると認めるときは、家賃を減免することができる。

3 住宅確保要配慮者居住支援協議会は、賃貸住宅に入居する者の収入が一定の基準を下回った場合、賃貸人に対して家賃徴収の猶予を命令することができる。

4 生活福祉資金貸付制度の不動産担保型生活資金は、経済的に困窮した65歳未満の者に対し、居住する不動産を担保に生活資金の貸付けを行うものである。

5 被災者生活再建支援金は、自然災害により生活基盤に被害を受けた者のうち、一定の所得以下の者に対し、生活再建のための費用の貸付けを行うものである。

問題35

次の記述のうち、社会福祉法における地域福祉の推進に関する規定として、適切なものを2つ選びなさい。

1 国及び地方公共団体は、関連施策との連携に配慮して、包括的な支援体制の整備のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

2 都道府県は、その区域内においてあまねく福祉サービス利用援助事業が実施されるために必要な事業を行うものとする。

3 都道府県社会福祉協議会は、その区域内における地域福祉の推進のための財源として、共同募金を実施することができる。

4 市町村は、子ども・障害・高齢・生活困窮の一部の事業を一体のものとして実施することにより、地域生活課題を抱える地域住民に対する支援体制等を整備する重層的支援体制整備事業を実施することができる。

5 市町村社会福祉協議会は、市町村地域福祉計画を策定するよう努めなければならない。

問題36

民生委員に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 給与は支給しないものとされ、任期は定められていない。

2 定数は厚生労働大臣の定める基準を参酌して、市町村の条例で定められる。

3 市町村長は、民生委員協議会を組織しなければならない。

4 児童委員を兼務するが、本人から辞退の申出があれば、その兼務を解かなければならない。

5 非常勤特別職の地方公務員とみなされ、守秘義務が課せられる。

問題37

国の政策において、国民又は地域住民に期待される役割に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「成年後見制度利用促進法」に基づき、成年後見制度の利用の促進に関する施策に協力すること。

2 「障害者虐待防止法」等に基づき、虐待を発見した場合に、養護者に対する支援の中心となること。

3 「国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針」(平成5年厚生省告示第117号)に基づき、ボランティアとして、支援を求めている人の意向に関わりなく、自分が必要と思う支援をすること。

4 「災害対策基本法」に基づき、避難支援等関係者として、災害時に自分の避難より、避難行動要支援者の避難を優先して支援をすること。

5 「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」(2017年(平成29年)改訂(厚生労働省))に基づき、医師の指示に従って認知症の高齢者をケアすること。

(注)1 「成年後見制度利用促進法」とは、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」のことである。

2 「障害者虐待防止法」とは、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。

問題38

地域福祉の基礎的な概念に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは、道路や上下水道、社会福祉施設など住民が共同で利用することができる地域の公共的な資源のことをいう。

2 セルフヘルプグループとは、成員同士のピアサポートの実施や社会的地位の向上を図ることを目的として、同じ職種の専門職によって構成される団体のことをいう。

3 ローカルガバナンスとは、正当な手続によって選出された首長や議員によって地方政治が一元的に統治されている状態のことをいう。

4 プラットフォームとは、住民や地域関係者、行政などがその都度集い、相談、協議し、学び合う場のことをいう。

5 ソーシャルサポートネットワークとは、本人を取り巻く全ての援助関係のうち、家族や友人などインフォーマルな社会資源に関するネットワークを除いたもののことをいう。

問題39

地域福祉の調査方法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 コミュニティカフェの利用者の満足度を数量的に把握するため、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて調査データを分析した。

2 地域における保育サービスの必要量を推計するため、幅広い住民に参加を呼び掛けて住民懇談会を行った。

3 福祉有償運送に対する高齢者のニーズを把握するため、無作為に住民を選んでフォーカスグループインタビューを実施した。

4 介護を行う未成年者のニーズを把握するため、構造化面接の方法を用いて当事者の自由な語りを引き出す調査を実施した。

5 認知症高齢者の家族介護者の不安を軽減する方法を明らかにするため、当事者と共にアクションリサーチを実施した。

問題40

事例を読んで、U地域包括支援センターに配属されたB生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)が「協議体」の運営について提案したことに関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

担当地域(小学校区)で協議体を組織するに当たり、B生活支援コーディネーターは、事務局を構成する予定の行政や社会福祉協議会の担当者と協議体の運営のための準備会を行うことになった。準備会では、B生活支援コーディネーターが、協議体の目的と、それを具体化するための方針を提案した。

1 地域のニーズを共有化するために、これまで地域ケア会議で出された地域課題を検討することを提案した。

2 協議体を効率的に運営するために、既存の会議体で協議されている介護分野以外の内容については、協議の対象としないことを提案した。

3 多様な主体の協力を確保するために、地縁組織だけでなく、社会福祉法人や特定非営利活動法人などの民間団体にも参加を呼び掛けることを提案した。

4 地域づくりにおける意思統一を図るために、あらかじめ行政が目指す地域の姿を提示し、それに向かって協議することを提案した。

5 生活支援サービスを開発するために、市外の先行事例を紹介し、協議体の参加者にそれと同じ活動を実施することを提案した。

(注) ここでいう「協議体」とは、介護保険の生活支援・介護予防サービスの体制整備に向けて、市町村が資源開発を推進するために設置するものである。

問題41

事例を読んで、N市社会福祉協議会の職員であるC社会福祉士が企画したプログラム評価の設計に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

N市社会福祉協議会は、当該年度の事業目標に「認知症の人に優しいまちづくり」を掲げ、その活動プログラムの一つとして認知症の人やその家族が、地域住民、専門職と相互に情報を共有し、お互いを理解し合うことを目指して、誰もが参加でき、集う場である「認知症カフェ」の取組を推進してきた。そこで、C社会福祉士は、プログラム評価の枠組みに基づいて認知症カフェの有効性を体系的に検証することにした。

1 認知症カフェに参加した地域住民が、認知症に対する理解を高めたかについて検証するため、ニーズ評価を実施する。

2 認知症カフェの取組に支出された補助金が、十分な成果を上げたかについて検証するため、セオリー評価を実施する。

3 認知症カフェが、事前に計画された内容どおりに実施されたかを検証するため、プロセス評価を実施する。

4 認知症カフェに参加する認知症の人とその家族が、認知症カフェに求めていることを検証するため、アウトカム評価を実施する。

5 認知症カフェが、目的を達成するプログラムとして適切に設計されていたかを検証するため、効率性評価を実施する。

福祉行財政と福祉計画

問題42

福祉行政における厚生労働大臣の役割に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 民生委員法に基づき、都道府県知事の推薦によって民生委員を委嘱する。

2 介護保険法に基づき、要介護認定の結果を通知する。

3 生活困窮者自立支援法に基づき、生活困窮者就労訓練事業の認定を行う。

4 「障害者総合支援法」に基づき、市町村審査会の委員を任命する。

5 子ども・子育て支援法に基づき、子ども・子育て支援事業計画の基本指針を定める。

(注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

問題43

福祉行政における市町村の役割に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 介護支援専門員実務研修受講試験及び介護支援専門員実務研修を行う。

2 社会福祉法人の設立当初において、理事の選出を行う。

3 特別養護老人ホームの設備及び運営について、条例で基準を定める。

4 訓練等給付費の不正請求を行った指定障害福祉サービス事業者について、指定の取消しを行う。

5 小学校就学前の子どものための教育・保育給付の認定を行う。

問題44

次のうち、地方自治法上の法定受託事務に当たるものとして、正しいものを1つ選びなさい。

1 生活保護法に規定される生活保護の決定及び実施

2 介護保険法に規定される居宅介護サービス費の支給

3 身体障害者福祉法に規定される身体障害者手帳の交付

4 児童福祉法に規定される保育所における保育

5 国民健康保険法に規定される国民健康保険料の徴収

問題45

「令和3年版地方財政白書」(総務省)における2019年度(令和元年度)の民生費に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 地方公共団体の目的別歳出純計決算額の構成比は、高い方から、教育費、公債費、民生費の順となっている。

2 民生費の目的別歳出の割合は、市町村では児童福祉費よりも社会福祉費の方が高い。

3 民生費の目的別歳出の割合は、都道府県では生活保護費よりも老人福祉費の方が高い。

4 民生費の性質別歳出の割合は、市町村では扶助費よりも人件費の方が高い。

5 民生費の性質別歳出の割合は、都道府県では補助費等よりも扶助費の方が高い。

問題46

福祉行政における専門職等の法令上の位置づけに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 都道府県の福祉事務所に配置される社会福祉主事は、老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法に関する事務を行う。

2 福祉事務所の現業を行う所員(現業員)は、社会福祉主事でなければならない。

3 身体障害者更生相談所の身体障害者福祉司は、身体障害者の更生援護等の事業に5年以上従事した経験を有しなければならない。

4 地域包括支援センターには、原則として社会福祉主事その他これに準ずる者を配置しなければならない。

5 児童相談所においては、保育士資格を取得した時点でその者を児童福祉司として任用することができる。

問題47

法律に定める福祉計画に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村介護保険事業計画では、都道府県が定める老人福祉圏域内で事前に調整をした上で、介護保険施設の種類ごとに必要入所定員総数を定める。

2 市町村障害福祉計画では、指定障害者支援施設におけるサービスの質の向上のために講ずる措置を定めるよう努める。

3 市町村子ども・子育て支援事業計画では、教育・保育情報の公表に関する事項を定めるよう努める。

4 市町村障害児福祉計画では、サービス、相談支援に従事する者の確保又は資質の向上のために講ずる措置を定めるよう努める。

5 市町村地域福祉計画では、地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉、その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項を策定するよう努める。

問題48

事例を読んで、次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

P市の自治体職員であるDさんは子ども・子育て推進課に配属になり、次期の子ども・子育て支援事業計画の策定の担当になった。そこで、P市子ども・子育て支援事業計画を策定する際に、法令上遵守すべき点を確認した。

1 サービス目標量の達成や供給について、今期の計画から変更しない場合は、あらかじめ都道府県と協議することは見送ってもよい。

2 教育・保育及び地域子ども・子育て支援事業の量の見込みを定めるに当たり、参酌すべき標準を作成しなければならない。

3 教育・保育の量の見込み並びに実施しようとする教育・保育の提供体制の確保の内容及びその実施時期をどのようにすべきか検討しなければならない。

4 地域子ども・子育て支援事業に従事する者の確保と資質の向上のために、研修会の実施を企画しなければならない。

5 P市だけでなく、近隣の市町村も含めた、広域的な見地からの調整を行わなければならない。

社会保障

問題49

日本の医療保険制度と介護保険制度などの歴史的展開に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 第二次世界大戦後の1954年(昭和29年)に、健康保険制度が創設された。

2 1961年(昭和36年)に達成された国民皆保険により、各種の医療保険制度は国民健康保険制度に統合された。

3 1973年(昭和48年)に、国の制度として老人医療費の無料化が行われた。

4 1982年(昭和57年)に制定された老人保健法により、高額療養費制度が創設された。

5 2000年(平成12年)に、介護保険制度と後期高齢者医療制度が同時に創設された。

問題50

「平成30年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)による2018年度(平成30年度)の社会保障給付費等に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 社会保障給付費の対国内総生産比は、40%を超過している。

2 国民一人当たりの社会保障給付費は、150万円を超過している。

3 部門別(「医療」、「年金」、「福祉その他」)の社会保障給付費の構成割合をみると、「年金」が70%を超過している。

4 機能別(「高齢」、「保健医療」、「家族」、「失業」など)の社会保障給付費の構成割合をみると、「高齢」の方が「家族」よりも高い。

5 社会保障財源をみると、公費負担の内訳は国より地方自治体の方が多い。

問題51

社会保険と公的扶助に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会保険は特定の保険事故に対して給付を行い、公的扶助は貧困の原因を問わず、困窮の程度に応じた給付が行われる。

2 社会保険は原則として金銭給付により行われ、公的扶助は原則として現物給付により行われる。

3 社会保険は救貧的機能を果たし、公的扶助は防貧的機能を果たす。

4 社会保険は事前に保険料の拠出を要するのに対し、公的扶助は所得税の納付歴を要する。

5 公的扶助は社会保険よりも給付の権利性が強く、その受給にスティグマが伴わない点が長所とされる。

問題52

日本の社会保険の費用負担に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 健康保険組合の療養の給付に要する費用には、国庫負担がある。

2 患者の一部負担金以外の後期高齢者医療の療養の給付に要する費用は、後期高齢者の保険料と公費の二つで賄われている。

3 老齢基礎年金の給付に要する費用は、その4割が国庫負担で賄われている。

4 介護保険の給付に要する費用は、65歳以上の者が支払う保険料と公費の二つで賄われている。

5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金の支給に要する費用には、国庫負担がある。

問題53

雇用保険法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 基本手当は、自己の都合により退職した場合には受給できない。

2 保険者は、都道府県である。

3 近年の法改正により、育児休業給付は、失業等給付から独立した給付として位置づけられた。

4 雇用調整助成金は、労働者に対して支給される。

5 雇用安定事業・能力開発事業の費用は、事業主と労働者で折半して負担する。

問題54

事例を読んで、ひとり親世帯などの社会保障制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

大学生のEさん(22歳)は、半年前に父親を亡くし、母親(50歳)と二人暮らしである。母親は就労しており、健康保険の被保険者で、Eさんはその被扶養者である。Eさんは、週末に10時間アルバイトをしているが、平日の通学途上で交通事故に遭い、大ケガをした。

1 Eさんの母親の前年の所得が一定額以上の場合、Eさんは国民年金の学生納付特例制度を利用できない。

2 Eさんがアルバイト先を解雇されても、雇用保険の求職者給付は受給できない。

3 Eさんの母親は、収入のいかんにかかわらず、遺族基礎年金を受給できる。

4 Eさんがケガの治療のため、アルバイト先を休み、賃金が支払われなかった場合、労働者災害補償保険の休業給付が受けられる。

5 Eさんは、母親の健康保険から傷病手当金を受給できる。

問題55

公的年金の被保険者に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 厚生年金保険の被保険者は、老齢厚生年金の受給を開始したとき、その被保険者資格を喪失する。

2 20歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者となることができない。

3 被用者は、国民年金の第一号被保険者となることができない。

4 厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者であっても、学生である間は、国民年金の第三号被保険者となることができない。

5 国民年金の第三号被保険者は、日本国内に住所を有する者や、日本国内に生活の基礎があると認められる者であること等を要件とする。

障害者に対する支援と障害者自立支援制度

問題56

「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」(厚生労働省)における障害者の実態に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 身体障害者手帳所持者のうち、65歳以上の者は半分に満たない。

2 身体障害者手帳所持者のうち、障害の種類で最も多いのは肢体不自由である。

3 障害者手帳所持者のうち、困った時の相談相手として、相談支援機関と答えた者が最も多い。

4 18歳以上65歳未満の障害者手帳所持者のうち、一月当たりの平均収入として18万円~21万円未満と答えた者が最も多い。

5 障害者手帳の種類別でみると、療育手帳所持者が最も多い。

問題57

「障害者総合支援法」における相談支援などに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 サービス利用支援では、利用者の自宅を訪問し、身体介護や家事援助等の介助を行う。

2 地域相談支援では、地域生活から施設入所や精神科病院への入院に向けた移行支援を行う。

3 相談支援は、訓練等給付費の支給対象となる。

4 基幹相談支援センターは、地域における相談支援の中核的な役割を担う機関である。

5 指定障害福祉サービスの管理を行う者として相談支援専門員が規定されている。

(注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

問題58

「障害者総合支援法」の実施に関わる関係機関などの役割に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 障害支援区分の認定は、市町村が行う。

2 介護給付費に関する処分に不服がある者は、市町村長に対して審査請求ができる。

3 訓練等給付費の支給決定は、都道府県が行う。

4 自立支援給付や地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本指針は、都道府県が定める。

5 国、都道府県及び市町村は、自立支援給付に係る費用をそれぞれ3分の1ずつ負担する。

問題59

事例を読んで、V相談支援事業所のF相談支援専門員(社会福祉士)によるこの段階における支援方針として、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

重症心身障害があるGさん(40歳)は、70歳代の母親と二人暮らしで、喀痰(かくたん)吸引などの医療的ケアを必要としている。家族や、Gさんが通う生活介護事業所の職員は、Gさんの表情を読み取りながら長期にわたり生活全般の介助をしてきた。Gさんは、先月、誤嚥性(ごえんせい)肺炎を起こして入院したが、状態が落ち着いてきたので退院することになった。退院先を決めるに当たり、別居している姉が、これを機に、母親の負担も考えて、医療的ケアが可能な共同生活援助(グループホーム)を利用してはどうかと母親に勧めている。一方、母親は看護師などによる自宅への訪問には消極的であるが、可能な限り自宅でGさんと一緒に生活を続けたいと考えている。そこで、母親はF相談支援専門員に相談した。

1 病状や医療的ケアの必要性を考えて、退院先は医師の方針で決定する。

2 母親の負担を考え、姉の提案する共同生活援助(グループホーム)の利用を勧める。

3 Gさんに最も身近な母親の意向に沿い、退院後は自宅で生活することを方針として決定する。

4 医療的ケアの必要性を考慮し、医師に対して病院での生活継続を依頼する。

5 Gさん参加のもと意思決定支援会議を開催し、Gさんが退院後どのような生活を望むのか検討する。

問題60

知的障害者福祉法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 知的障害者に対する入院形態として、医療保護入院が規定されている。

2 市町村は、知的障害者更生相談所を設けなければならないと規定されている。

3 市町村は、その設置する福祉事務所に知的障害者福祉司を置くことができると規定されている。

4 1998年(平成10年)に、精神衛生法から知的障害者福祉法に名称が変更された。

5 知的障害者に対して交付される「療育手帳」について規定されている。

問題61

障害者基本法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「障害者」とは、「身体障害、知的障害又は精神障害により、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」と定義されている。

2 意思疎通のための手段としての言語に手話が含まれることが明記されている。

3 都道府県は、毎年、障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を国に提出しなければならないとされている。

4 社会モデルを踏まえた障害者の定義は、国際障害者年に向けた取組の一環として導入された。

5 障害を理由とする差別の禁止についての規定はない。

問題62

「障害者雇用促進法」及び「障害者優先調達推進法」に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 国は、障害者就労施設、在宅就業障害者及び在宅就業支援団体から優先的に物品等を調達するよう努めなければならない。

2 国や地方公共団体は、法定雇用率を上回るよう障害者の雇用を義務づける障害者雇用率制度の対象外である。

3 事業主は、障害者就労施設から物品を調達することで障害者雇用義務を履行したとみなすことができる。

4 事業主は、在宅就業支援団体を通じて在宅就業障害者に仕事を発注することで障害者雇用義務を履行したとみなすことができる。

5 事業主は、身体障害者及び知的障害者を雇用する法的義務を負うが、精神障害者については雇用するよう努めればよい。

(注)1 「障害者雇用促進法」とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」のことである。

2 「障害者優先調達推進法」とは、「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」のことである。

低所得者に対する支援と生活保護制度

問題63

生活保護法が規定する基本原理・原則等に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 この法律により保障される最低限度の生活は、国民一般の平均的な資産基準によって決定される。

2 保護を申請できるのは、要保護者及びその扶養義務者に限られている。

3 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行う。

4 保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等に関して、世帯の実際の相違を考慮することなく一定の必要の基準に当てはめて行う。

5 保護は、親族を単位としてその要否を定める。

問題64

事例を読んで、Q市福祉事務所のH生活保護現業員(社会福祉士)がJさんに対して行う説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

Jさん(41歳)は、近所のスーパーマーケットで働きながらアパートで高校生の長男と二人で暮らしていたが、2年前に病気によって仕事を辞めることになり、妹から仕送りを受けていた。しかし仕送りは約半年で途絶えてしまい、1年前から生活保護を受給することになった。通院を続けたことで、1か月前から病状が大分良くなり、現在は医師から就労できる状態であると診断され、アパートが手狭になったことから長男と共に転居することも考えている。

1 妹からの仕送りが再開した場合、世帯の収入として認定されることはない。

2 長男がアルバイトをした場合、世帯の収入として認定されることはない。

3 就労した場合、保護が廃止されずに就労自立給付金を毎月受給できる。

4 住宅扶助の基準額を超える家賃の住宅に転居する場合、生活困窮者住居確保給付金を毎月受給できる。

5 医師から就労可能であると診断されても、直ちに保護が廃止されるわけではない。

問題65

生活保護法で規定されている被保護者の権利及び義務に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 被保護者は、保護金品を標準として租税その他の公課を課せられることがある。

2 被保護者は、既に給与を受けた保護金品を差し押さえられることがある。

3 被保護者は、保護を受ける権利を譲り渡すことができる。

4 被保護者が能力に応じて勤労に励むことを怠っていると認められる場合、被保護者は受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

5 急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けた場合、被保護者は受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

問題66

生活保護法上の保護施設に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 保護施設は、救護施設、更生施設、宿所提供施設の3種類に分類される。

2 救護施設を経営する事業は、第二種社会福祉事業である。

3 特定非営利活動法人は、保護施設を設置することができる。

4 救護施設は、身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする保護施設である。

5 更生施設は、身体上又は精神上の理由により養護及び生活指導を必要とする要保護者を入所させて、生業扶助を行うことを目的とする保護施設である。

問題67

事例を読んで、R市福祉事務所のK生活保護現業員(社会福祉士)の支援に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

Lさん(60歳)は単身で生活しており、親族とは20年以上音信不通である。Lさんは、退職金規程のない会社で働いていたが、5年ほど前から持病が悪化して仕事ができなくなり、3年前に会社を退職した。それ以降は無職となっている。退職後、消費者金融から借金をして生活しており、家賃や公共料金も滞納しているようである。現在も直ちには就労が困難な健康状態であるため、Lさんは生活保護の受給を希望し、R市福祉事務所に生活保護を申請した。

1 保護の要否判定を行うとともに、援助計画策定のために必要な情報収集を行う。

2 保護の申請に当たっての条件として、「無料低額診療事業」を利用するように指導する。

3 社会福祉協議会と連携して、日常生活自立支援事業の利用を促す。

4 福祉事務所からLさんの扶養義務者に連絡を取り、Lさんの借金の返済を要請する。

5 公共職業安定所(ハローワーク)で求職活動をするように指導する。

(注) 「無料低額診療事業」とは、社会福祉法第2条第3項第9号に規定する「生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業」のことである。

問題68

生活保護の実施機関に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 都道府県知事は、生活保護法に定めるその職権を、知事の管理に属する行政庁に委任することはできないとされている。

2 社会福祉主事は、生活保護法の施行について、都道府県知事又は市町村長の事務の執行を代理する。

3 民生委員は、生活保護法の施行について、市町村の補助機関として位置づけられている。

4 保護の実施機関は、要保護者が急迫した状況にあるときでも、職権を用いて保護を開始することはできないとされている。

5 保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなったときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定しなければならない。

問題69

生活福祉資金貸付制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 実施主体は、国である。

2 市町村社会福祉協議会を通じて借入れを申し込むことができる。

3 資金の貸付けを受けるに当たって、公共職業安定所(ハローワーク)で求職活動を行うことが要件とされている。

4 総合支援資金については、貸付けを受けるに当たって、生活保護の申請をすることが要件とされている。

5 緊急小口資金については、貸付けを受けるに当たって、連帯保証人を立てることが要件とされている。

保健医療サービス

問題70

事例を読んで、公的医療保険とその給付などに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

大手企業の会社員Mさん(50歳)は専業主婦の妻(所得なし)と二人で生活し、年収は640万円、標準報酬月額は41万円である。年次有給休暇は計画的に取得し、日常の仕事の負担は重いとは感じていなかったが、11月中旬にW病院で胃がんと診断され、12月1日に入院となった。病床は本人の希望によって有料個室とした。翌日に胃全摘術を受け、12月20日に退院した。退院前日に病院から入院医療費の総額が96万9千円となることが告げられた。

1 Mさんの医療費は、労働者災害補償保険から給付される。

2 Mさんの自己負担は、当該医療費の1割である。

3 Mさんの差額ベッド代は、公的医療保険からの給付の対象外となる。

4 Mさんの自己負担は、高額療養費制度を適用すれば、全額免除となる。

5 Mさんが加入する公的医療保険は、Mさんの妻が加入する公的医療保険とは異なる。

問題71

「平成30年度国民医療費の概況」(厚生労働省)に基づく、2018年度(平成30年度)の国民医療費に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 国民医療費は、50兆円を超えている。

2 国民医療費の国民所得に対する比率は3%に満たない。

3 国民医療費の財源の内訳は、保険料の割合よりも公費の割合の方が大きい。

4 国民医療費は、診療種類別にみると、薬局調剤医療費の占める割合が最も大きい。

5 人口一人当たり国民医療費は、75歳以上の人口一人当たり国民医療費よりも低い。

問題72

災害拠点病院に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 24時間対応可能な救急体制は必要ないとされている。

2 災害発生時、被災地外の災害拠点病院の医療従事者は、被災地に入らず待機することになっている。

3 各都道府県に1病院ずつ、全国に47病院が設置されている。

4 重篤救急患者に対応できる高度な診療機能は求められていない。

5 災害派遣医療チーム(DMAT)を保有することになっている。

問題73

次の記述のうち、2014年(平成26年)の医療法改正(第六次)の内容として、正しいものを1つ選びなさい。

1 地域医療支援病院制度が創設された。

2 医療計画に地域医療構想の策定が位置づけられた。

3 特定機能病院制度が創設された。

4 地域的単位として、新たに区域(医療圏)が創設された。

5 療養型病床群の設置が制度化された。

問題74

患者の治療方針の決定に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 肝臓がんとの診断を受けたAさん(66歳)は、インフォームドコンセントとして、検査結果の内容と今後の治療方針について医師から説明を受け、治療に同意した。

2 終末期にあるBさん(52歳)の家族は、インフォームドチョイスとして、本人に気付かれないように主治医と治療方針を決定した。

3 小児がん患者のCちゃん(11歳)の保護者は、インフォームドアセントとして、本人の意思を確認せずに終末期医療における延命医療の拒否を医師に伝えた。

4 終末期にあるDさん(78歳)と家族と医療従事者は、パターナリズムモデルに従って、繰り返し治療選択について話し合い、意思決定を行った。

5 E医師は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行したFさん(48歳)の意思を推測し、心肺停止時に心肺蘇生(そせい)措置をしない旨をリビングウィルとしてカルテに記載した。

問題75

次の記述のうち、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が行うとされる業務として、正しいものを1つ選びなさい。

1 理学療法士が、入院患者の生命維持管理装置を操作する。

2 理学療法士が、脳梗塞後遺症の患者に歩行訓練を行う。

3 作業療法士が、リハビリテーション中に気分不良を訴えた患者に点滴をする。

4 作業療法士が、看護師の指導の下で外来患者の採血をする。

5 言語聴覚士が、在宅患者の胃ろうチューブの交換を行う。

問題76

事例を読んで、G医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)によるHさんの経済的な不安への対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

Hさん(48歳)は、企業に勤務する会社員で、専業主婦の妻(46歳)と大学生の長男(20歳)の3人暮らしである。2週間前に脳梗塞を発症し、現在、急性期病院に入院中である。主治医から、重度の麻痺(まひ))により今後は歩行が困難になるため、来週リハビリテーション病院に転院し、3か月ほどのリハビリテーション治療が必要であることを告げられた。転院等の相談のためにG医療ソーシャルワーカーが紹介された。G医療ソーシャルワーカーは、「医療費及び生活費などの経済的なことが心配です」と訴えるHさんに具体的な情報を提供した。

1 転院前に障害年金を受給できることを説明する。

2 介護保険の要介護認定を受ければ、生活費が支給されることを説明する。

3 療養の給付により医療費の一部負担金が全額免除されることを説明する。

4 勤務先から入院中の休業に対して報酬が支払われていなければ、傷病手当金を受給できることを説明する。

5 特別児童扶養手当を申請すれば、支給されることを説明する。

権利擁護と成年後見制度

問題77

行政行為の効力に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 重大かつ明白な瑕疵(かし)のある行政行為であっても、取り消されるまでは、その行政行為の効果は否定されない。

2 行政行為の無効確認訴訟の出訴期間は、一定期間に制限されている。

3 行政行為の効力は、国家賠償請求訴訟によっても取り消すことができる。

4 行政庁は、審査請求に対する裁決など、判決と似た効果を生ずる行政行為であっても、自ら違法であると気付いたときは、職権で取り消すことができる。

5 行政庁は、税の滞納処分など、判決を得なくても強制執行をすることができる。

問題78

後見登記に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 任意後見契約は登記できない。

2 未成年後見は登記することができる。

3 保佐人に付与された代理権の範囲は登記できない。

4 自己が成年被後見人として登記されていない者は、登記官への請求に基づき、登記されていないことの証明書の交付を受けることができる。

5 誰でも、登記官への請求に基づき、成年後見人が記録された登記事項証明書の交付を受けることができる。

問題79

次のうち、成年後見人になることができない者として、正しいものを1つ選びなさい。

1 兄弟姉妹

2 被保佐人

3 解任の審判を受けた補助人

4 本人の配偶者の成年後見人

5 社会福祉法人

問題80

事例を読んで、任意後見契約に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

Jさん(70歳)は、将来に判断能力が低下して財産の管理がおろそかになることを心配し、S市社会福祉協議会の権利擁護センターに相談した。Jさんは、同センターの職員Kさんの助言を受け、親友のLさんを受任者として、任意後見契約に関する法律に従った任意後見契約を締結することにした。

1 任意後見契約は、社会福祉協議会の事務所において、公証人でなくても第三者の立会いがあれば締結することができる。

2 締結された任意後見契約の効力を生じさせる際、家庭裁判所は、必要がなければ、任意後見監督人を選任しない方法をとることができる。

3 締結された任意後見契約の効力を生じさせる際、Jさんからの推薦があれば、家庭裁判所は、推薦されたKさんを任意後見監督人として選任しなければならない。

4 任意後見契約が締結されたとしても、家庭裁判所は、請求があり、Jさんの利益のため特に必要があると認めるときは、後見開始の審判等をする。

5 任意後見契約に本人意思尊重義務の定めがある場合に限って、LさんはJさんの意思を尊重する義務を負う。

問題81

親権に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 成年年齢に達した学生である子の親は、その子が親の同意なく行った契約を、学生であることを理由に取り消すことができる。

2 父母が離婚し、子との面会交流について父母の協議が調わないときは、家庭裁判所がそれを定める。

3 父母が裁判上の離婚をする場合、家庭裁判所の判決により、離婚後も未成年者の親権を共同して行うことができる。

4 嫡出でない子を父が認知すれば、認知により直ちにその父がその子の親権者となる。

5 親にとって利益となるが子にとって不利益となる契約であっても、親は、その子を代理することができる。

問題82

事例を読んで、日常生活自立支援事業による支援に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

Mさん(50歳)は、軽度の知的障害があり、自宅で母親と二人で暮らしていたが、2か月前に母親が死去した。その後、Mさんは障害者支援施設の短期入所を利用していたが、共同生活援助(グループホーム)への転居が決まった。さらにMさんを担当するA相談支援専門員の助言で、T市社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業の利用に至り、B専門員がその担当となった。

1 Mさんが日常生活自立支援事業の契約締結前に利用した短期入所の費用の支払を、Mさんとの利用契約に基づきB専門員が行うことができる。

2 Mさんの母親の遺産相続に関する法律行為をMさんに代わりB専門員が行うことができる。

3 Mさんの共同生活援助(グループホーム)入居後のB専門員による金銭管理の内容を、B専門員とA相談支援専門員との協議で決める。

4 共同生活援助(グループホーム)に入居するMさんについては、ホームの支援者による見守りが期待されるため、日常生活自立支援事業による訪問支援は行わないこととする。

5 Mさんの成年後見制度への移行を視野に入れ、日常生活自立支援事業の開始とともに直ちに関係機関との調整に入らなければならない。

問題83

成年後見制度における市町村長の審判申立てに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村長が審判を申し立てない場合、都道府県知事が代わって審判を申し立てることができる。

2 「成年後見関係事件の概況(令和2年1月~12月)」(最高裁判所事務総局家庭局)によると、「成年後見関係事件」の申立人の割合は、市町村長よりも配偶者の方が多い。

3 市町村長申立てにおいて、市町村長は、後見等の業務を適正に行うことができる者を家庭裁判所に推薦することができないとされている。

4 知的障害者福祉法に基づき、知的障害者の福祉を図るために特に必要があると認めるときは、市町村長が後見開始の審判等の申立てを行うことができる。

5 市町村長申立ては、後見開始及び保佐開始の審判に限られ、補助開始の審判は含まれないとされている。

(注) 「成年後見関係事件」とは、後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件をいう。

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